天皇陛下が受けられた教育との大きな違い

令和4年(2022年)も、記者から「(悠仁殿下に対する)皇位継承者としての教育方針」について、直球の質問が投げかけられた。

ところが、それに対して「次のことにつきましては」という婉曲的な表現をして、お答えもほとんど平成28年(2016年)の繰り返しに、わずかに以下の内容を加えただけだった。

「それとともに書籍などを通じて、様々なことを、中でも日本の歴史などについては知っておいてほしいと思って、そういう話をすることがあります」

ここで注意したいのは、日本の文化と歴史を学ぶことには触れておられても、最も大切なはずの「天皇の歴史」がまったく抜けている点だ。事実としても、これについて特別な教育が行われたことは知られていない。

天皇陛下が“皇位継承者”として上皇、上皇后両陛下から受けてこられた教育と比較すると、大きな違いがあるのに驚く。

これはおそらく、秋篠宮殿下が無責任であるとか、教育に熱心でないということを意味するのではない。そうではなくて、次代の天皇に最もふさわしいのは敬宮としのみや(愛子内親王)殿下であると、正しく理解しておられるからではあるまいか。

いわゆる帝王学、皇位継承者としての学びにおいて、天皇陛下のお側で暮らし、その感化を受けられる以上の教育はないことを、秋篠宮殿下こそ誰よりも深く知っておられるに違いない。

悠仁さまの成年の「ご感想」

天皇陛下は成年式を前にした初の公式記者会見で、次のように述べておられた(昭和55年[1980年]2月20日)。

「今の皇室の中心であられる天皇陛下(昭和天皇)もやはり国民の幸福を願い続けておられると思うんです。やはり皇族の一員であるぼくとしても、陛下のご態度にならいたいと考えています。
でもぼくの場合、まだ若くて本当にそういったことがよくわからないんで、そういった心を育てるっていうことにおいても、多くの人と接触するっていうこと、日本をもっとよく知りたい、多くの人を理解したいと考えています」

今の悠仁殿下よりも2歳年上でのご成年ながら、このご発言を先ごろご発表になった悠仁殿下のご成年に際しての「ご感想」と比べると、多くの国民はどのような受け止め方をするだろうか。あるいは同じく2歳年上ながら、敬宮殿下のご成年に際しての記者会見(令和4年[2022年]3月17日)の内容と「ご感想」を比べてもよいかも知れない。

敬宮殿下のご会見では、以下のご発言があった。

「私は幼い頃から、天皇皇后両陛下や上皇上皇后両陛下を始め、皇室の皆様が、国民に寄り添われる姿や、真摯に御公務に取り組まれるお姿を拝見しながら育ちました。そのような中で、上皇陛下が折に触れておっしゃっていて、天皇陛下にも受け継がれている、皇室は、国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にしながら務めを果たす、ということが基本であり、最も大切にすべき精神であると、私は認識しております」

これに対して悠仁殿下のご感想には、「天皇」という言葉も、「皇族」という言葉も、「皇室」という言葉も、「国民」という言葉も、いっさい出てこない。

高森 明勅(たかもり・あきのり)
神道学者、皇室研究者

1957年、岡山県生まれ。国学院大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得。皇位継承儀礼の研究から出発し、日本史全体に関心を持ち現代の問題にも発言。『皇室典範に関する有識者会議』のヒアリングに応じる。拓殖大学客員教授などを歴任。現在、日本文化総合研究所代表。神道宗教学会理事。国学院大学講師。著書に『「女性天皇」の成立』『天皇「生前退位」の真実』『日本の10大天皇』『歴代天皇辞典』など。ホームページ「明快! 高森型録