まずは形にしてトライアンドエラーを繰り返す

時間術の著者の多くが「80点でよし」とするのは、80点でもいいので早く仕上げて、

「足りないものがあれば、あとで上乗せする」
「実際に運用しながら改善を繰り返す」
「早めにミスを発見して、修正をする」

ほうが、結果的に完成度は高くなるからです。

武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の学部長・伊藤羊一さんは、自動車開発を例に、「大事なのは、まず形にしてみて、そこからトライアンドエラーを繰り返していくことなのです。(略)まずは形にして、走行テストを繰り返す。すると、多くの検証データが集まってくる。そのデータをもとに改善策を議論し、実行する」(『0秒で動け』/SBクリエイティブ)と述べ、修正を加えながら完成度を高めていく手法を評価しています。

スタートを切るときも、スピード重視です。準備に時間をかけすぎない。「100点の計画を立ててから実行に移そう」「事前準備を完璧に済ませてから行動しよう」と考えていると、スピード感が損なわれます。

準備が完璧でなくても、見切り発車ですぐに実行に移す。そして、実行しながら修正をしていきます。

公認会計士の金川顕教さんは、『すごい効率化』(KADOKAWA)で「50%くらいの段階で見切り発車していい」と述べています。実際にやっていく中で身につくことが多いからです。

「やるとなったら、だいたいまだ6、7割も概要をつかんでいないうちに走り出します。感覚的には、半分わかっていて、半分まだわかっていない、50%くらいの段階で見切り発車していいと思います」

相手が満足するクオリティ

出口治明さんが、「『完璧』は作った本人の視点での『完璧』」にすぎないと指摘するように、自分にとっての100点が、相手にとっても100点だとは限りません。

藤よし豊・小川真理子『「時間術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経BP)
藤吉豊・小川真理子『「時間術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経BP)

重要なのは、自分にとっての100点を目指すことではなく、相手が満足するクオリティを求めることであり、相手の期待に応えることです。求められている以上の質にするために、時間を費やす必要はありません。

過剰品質の例
●社内会議の資料の体裁に時間をかける。
●ビジネスメールの返信を丁寧に書きすぎる。
●電話なら数分で終わる用件を、文書で伝えようとして時間がかかる。
●プレゼン資料の写真の配置をミリ単位でこだわる。

「顧客によっては一刻も早くほしい場合もあるし、顧客の利益に直結しない丁寧さを必ずしも評価してくれないことも多い。(略)

だから、やみくもに丁寧にするのではなく、バランスを考え、顧客にとって本当に意味のあるところを集中的に丁寧にすればよいと考えてはどうだろうか」(赤羽雄二『速さは全てを解決する』/ダイヤモンド社)