絶対に謝らない人への対処法

自分にとって、そこまで大切な人ではないけれど、日常的にやりとりがある人。

たとえば、ほかの部署の上司や同僚、たまに会う知り合い、近所の人、なにかの会合でいっしょになる人などが、それにあたるでしょうか。

そんな人が絶対に謝らないタイプだったら、なかなかのストレスです。

指を突き出して怒る男性
写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです

可能であれば、少しずつ接触回数を減らしていって、遠い関係になっていくのがおすすめですが、難しい場合もありますよね。

本稿の最後にお伝えするのは、そんな変則的なパターンです。

謝らない相手にイラッとしたとき、私は次の2つのことを考えます。

① 相手の事情を「勝手に」想像する

絶対に謝らない人の本当の事情は、こちらにはわかりようがないので、想像するしかありません。どんなことを想像するかは自由です。

「昔から、プライドの高い人なのかも」
「ランチを食べそこねて、おなかが空いているのかも」
「今日、上司に怒られて、虫の居所が悪いのかも」

そんなふうに、相手のことを「勝手に」想像して、ストーリーをつくります。

相手に伝えるわけではないので、せっかくなら、こちらの溜飲りゅういんが下がるような笑えるストーリーがおすすめです。

誰もが今の精一杯を生きている

たとえば、次のような感じです。

「もしかして、この人は、さっきまで歯医者で虫歯の治療を受けていて、麻酔がまだ効いているのかも。だから、『ごめんなさい』の『ご』がうまく発音できなくて、『おめんなさい』になっちゃうから、言えないんだ……(笑)」

こんなふうに、自分のなかでクスッと笑えると、それが事実であるかどうかにかかわらず、イライラは一気におさまります。なるべく、笑えて、楽しいイメージをふくらませられるように練習してみてください。

この方法は、ほかにも「駅でぶつかってきた人」「列に割りこんできた人」「感じの悪い店員さん」などに出くわしたときにも効くので、ぜひお試しください。

② 「それが相手の今の精一杯」と考える

もう1つ、絶対に謝らないという選択をしている相手を見て、「それが相手の今の精一杯なんだ」とも考えます。

林健太郎『「ごめんなさい」の練習』(PHP研究所)
林健太郎『「ごめんなさい」の練習』(PHP研究所)

相手には相手の「ごめんなさい」のタイミングがあり、今は、そのタイミングではなかったのでしょう。もしかすると、永遠にその機会は来ないかもしれませんが、そうなったとしても、それが相手の精一杯です。

どんなに感じが悪い人も、イラッとする人も、あの人も、この人も、そして、あなた自身も、これまでにいろいろな事情があり、それらを抱えて精一杯生きています。

「だれもが今の精一杯を生きているんだ」と考えられると、相手に対してちょっとやさしくなれたり、相手のことを許しやすくなったりして、こちらの気持ちがラクになります。そんなおだやかな日々を、あなたも望んでいるのではないでしょうか。

林 健太郎(はやし・けんたろう)
否定しない専門家/コーチ

2 万人以上を指導したコーチ。リーダー育成家。ナンバーツーエグゼクティブ・コーチ。一般社団法人国際コーチ連盟日本支部(当時)創設者。1973年、東京都生まれ。バンダイ、NTTコミュニケーションズなどに勤務後、エグゼクティブ・コーチングの草分け的存在であるアンソニー・クルカス氏との出会いを契機に、プロコーチを目指して海外修行に出る。帰国後、2010年にコーチとして独立。これまでに大手企業などで2万人以上のリーダーに指導してきた。否定しないコミュニケーション術をまとめた『否定しない習慣』(フォレスト出版)が14万部を超えるベストセラーになる。このほか『できる上司は会話が9割』『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか?』『できるリーダーになれる人は、どっち?』(いずれも三笠書房)、『いまを抜け出す「すごい問いかけ」』(青春出版社)など著書多数。