所属型からミッション型にチームを変える
では、仲間はずれを作ることなく、チームを作ることはできるのだろうか。いや、そもそもチームプレイは可能なのだろうか。
チームを「所属型」から「ミッション型」に変じることで、可能になると私は考える。
所属型チームは「同じ所属」という、同窓会型のチームだ。同じ職種、同じ専門性、同じ出身地、同じ出身校。なんでもいいが、「帰属する先が同じ」であることが一体感を生み、チームを結束させる。
「ミッション型」のチームは、「所属」を気にしない。いや、多くのミッションでは異なる属性の職能を必要とするから、「同じ」であることは、ミッションの完遂を困難にする。多様性こそが鍵である。様々な能力を持つ、様々なキャラの集合体が「ミッション型」である。「梁山泊」のようなものだ。有志が集う場所、というわけだ。
私が、2014年からアフリカのシエラレオネで行ったエボラウイルス感染症対策がまさに「ミッション型」であった。
私はWHO(世界保健機関)のコンサルタントとしてシエラレオネに行ったのだが、実際の仕事はUNICEFや赤十字や、シエラレオネの自治体職員や、イギリス軍や(かつてシエラレオネはイギリスの植民地だった)、各NGOたちとともに行っていた。
与えられたミッションは「エボラウイルス感染症の制圧」である。様々な職能の人たちが集い、そのミッションのもとで仕事をしていた。
リーダーの資質を備えたリアリスト
私はしばしば、ポール・ファーマー(故人)が主催していたNGO、「パートナーズ・イン・ヘルス(PIH)」の人たちと仕事をしていた。
ポール・ファーマー(1959~2022年)はハーヴァード大学の感染症学の教授にして感染症専門医、かつ人類学の教授でもあるというまさに文系理系を融合した知の巨人であった。
貧しい国の貧しい人たちも、先進国の人と同じく健康になる権利はある、という崇高な理念のもとでPIHを設立し、途上国の医療改善に尽力していた。ロシアで、中米、南米で、アフリカで、ファーマーはたくさんの活動を行い、多くの人命を救っていた。単なる学者でも単なるヒューマニストでもなく、ビル・クリントンなど著名人と親交を持ち、国連などで丁々発止のネゴシエーションを行い、多額の支援資金を獲得するなど、策士な側面も持っていた。
最高の理想主義者にして、怜悧なリアリスト。彼こそは、私が理想とするリーダーの資質を備えた人物である。
そのポールのいたPIHの職員たちと、私はしばしばエボラ診療所の設立などで協働した。男性も女性もファースト・ネームで呼び合っていたが、彼らの年齢を知ることはついになかった。