税務上以外にも個人事業主になるメリットはある

最後に個人事業主になる税務以外の一般的なメリットについて述べてみたい。

好きな仕事を選べること

さまざまな職業が個人事業として成り立つことを説明した。選択肢が広いのでその中から自分が本当に好きな仕事を選ぶことができる。

なぜ好きな仕事を選ぶことがそんなに大事なのか?

起業したからといって、その後は順風満帆とは限らない。むしろ開業直後はその業界のプラクティスがわからなかったり、人脈がなかったりして様々な困難にぶつかることが多い。その際、嫌いな仕事をお金のためにやっていると、やっぱりやめようという気持ちが湧いてきて、いい仕事ができなくなる。

ところが好きな仕事であれば、たとえ収入がなくても続けようという気になる。

浦上登『70歳現役FPが教える 60歳からの「働き方」と「お金」の正解』(PHP研究所)
浦上登『70歳現役FPが教える 60歳からの「働き方」と「お金」の正解』(PHP研究所)

この違いは仕事で成功する上で大きい。仕事は継続しているうちに信用も高まり成長していくものだ。継続するためには、好きな仕事を選ぶことが必須といっても過言ではない。

何が自分にとって好きな仕事かは、自分のキャリアの棚卸をしながら考えてみよう。

どんなことに自分が情熱と時間そしてお金をかけてきたかを振り返れば、自分の本当に好きなことがわかってくる。好きなことは特技であることも多いのだ。

好きなことをさらに完成させる必要があると思ったらそのためにさらに勉強したり、それに必要な資格を取ることも可能だ。

時間の融通が利くが、自分で営業しなければならない

仕事の時間帯のマネージが自分でできること

オンライン・ビジネスが広がり、働く場所には柔軟性が出てきたが、会社員をはじめ給与所得者の勤務時間はほぼ決まっている。それに対し、個人事業主には仕事の時間帯を選べる自由度がある。

もちろん、顧客の希望した時間に面談しなければならないなどの制約はあるが、請け負った仕事を行う時間帯は自分で選ぶことができる。早朝でも夜遅くでも構わない。また、仕事のスケジュールを調整して1週間まとめた時間を作り、旅行に行くとこともできる。

ただ、個人事業主はよいことばかりではない。給与所得者と比べて厳しいのは、自分の仕事は自分で取ってこなければならないということだ。そうでないと、仕事も収入もなくなる。会社が仕事を与えてくれる会社員とは正反対の厳しさといってよい。

仕事を取るためには、自分の商品価値を高めたり、継続的な付き合いにより顧客との絆を強くしたり、新しい仕事がありそうなところにアンテナを張るなどの努力が必要になる。

カフェで話している高齢の女性
写真=iStock.com/Kavuto
※写真はイメージです
浦上 登(うらかみ・のぼる)
コンサルタント

早稲田大学政治経済学部を卒業後、三菱重工業に入社、海外向け発電プラントの仕事に携わる。ベネズエラ駐在、米国ロサンゼルス営業所長などを歴任後、三菱重工グループの保険代理店に移り、取締役東京支店長。2009年にはファイナンシャル・プランナーの上位資格CFPを取得。2017年にサマーアロー・コンサルティングを設立、著書に『70歳現役FPが教える 60歳からの「働き方」と「お金」の正解』(PHP研究所)がある。