相続におけるプラス思考とは
「プラス思考」がよいということは、世の中の多くの人が口にしています。ただ、その割に具体的にどう考えればよいのか、ピンとこない人も多いと思います。そこで、相続の場面における「プラス思考」について、私なりに考えてみました。
その根本にあるのは、ものの見方だと思います。図表2の50円玉の写真を見てください。はたして、この50円玉の穴はへこんでいるでしょうか、出っ張っているでしょうか。
最初はへこんでいるように見えるかもしれませんが、じっと見つめていると出っ張っているようにも見えてきます。同じ1枚の写真なのに、こちらの見方によって、へこんでいるようにも、出っ張っているようにも見えるのです。
同じように、1つの出来事、1つの行為に対して、見方や考え方を変えることで、評価はいくらでも変わります。時に、正反対にもなりえます。
例えば、親が自分に対して距離をおいて振る舞っているとしましょう。それを単に冷たい態度だととらえるのか、実は自立させようとあえて距離を取っているととらえるのか、それは受け手のあなた次第だというわけです。
冷静に考えれば、かわいいわが子を憎く思う親はほとんどいません。この態度は自分のためを思っているのだなと「プラス思考」で考えれば、親子の関係はうまくいきます。
しかし、それを「マイナス思考」で「冷たい親だ」、あるいは「自分は嫌われているんだ」などと考えると、親子の関係がぎくしゃくしてしまいます。相手はそんなことを考えていないのに、自らの「マイナス思考」でどんどん状況を悪くしてしまうわけです。
イラッとするのは自分の得意分野の発見
「プラス思考」については、本書でのちほど詳しく述べますが、ここでは「プラス思考」のクセをつける方法を2つ紹介しましょう。「イラッとしたときの心構え」と「ツキカエタの法則」です。
相続の手続きにおいて、きょうだいの行動や反応が遅くてイライラすることがあるかもしれません。日常生活でも、会社の同僚や部下の仕事が遅くてイラ立つことがあるでしょう。でも、そこで「あいつはダメなやつだ」「私に対して悪意があるんじゃないか」と受け取るのが「マイナス思考」です。
「プラス思考」で考えてみると、相手の遅さに気づくことは、自分の行動や仕事が早いことを意味しています。自分の仕事のペースに合わないから、遅い人に対してイラ立つわけです。
同様に、挨拶をしない人を見てイラ立つのは、自分は挨拶が得意だから、そうでない人が気になるのだと考えればいいのです。もし、自分も挨拶しなければ、他人の悪さには気がつかないはずです。
ですから、イラついたときは、イライラをそのままぶつけるのではなく、裏返して考えてみるといいのです。他人の不得意な点に気づいたら、「そうか、これは自分の得意分野なんだ。いいチャンスを与えられた」とプラスに考えましょう。
イラついたときに、たいていの人は相手を変化させようとしますが、それは無理なことです。仕事のペースが遅い人に早くしろといっても無理。文章が下手な人にうまい文章を書けというのも無理なことなのです。