あらゆる問題の「軽重」を見極める

次に、「これまでのやり方があまりに不合理なので、やり方を少し変えてみたい」と、あなた自身が思った時はどうすれば良いのかという問題です。

松本徹三『仕事が好きで何が悪い! 生涯現役で最高に楽しく働く方法』(朝日新書)
松本徹三『仕事が好きで何が悪い! 生涯現役で最高に楽しく働く方法』(朝日新書)

これは、第一の問題とは正反対で、正解は「できるだけのことをする」です。

しかし、結果が思うに任せず、「骨折り損のくたびれもうけ」に終わったとしても、そんなにがっかりする必要はありません。思った以上に難しい仕事であることがわかれば、そこで断念しても、大きな問題ではありません。あらゆる問題には、常に「軽重」があります。

「何が何でもやり遂げる」とまで思い詰めるのは、とりわけ重要な問題だけに絞るべきです。そうしなければ、どこかで息切れしてしまいます。

しかし、この過程で、合理化の難しい理由が「組織」に起因することがわかった場合は、簡単には諦めるべきではありません。不適切な「組織」の問題は、あなたが直面した問題だけでなく、他の多くの問題も惹起する可能性が高いからです。

表と裏を使い分けるべき局面

この場合は、同じ組織上の矛盾が惹起している他の問題がないかをチェックして、もしそういう問題があることがわかれば、それで困っている人たちと連携して動くことを考えるべきです。あなたと同じような立場の(その多くは中間管理職のような立場でしょうが)人たちが、数多く集まって連携すれば、かなりの変革が可能になるでしょう。

会議などでも、あなたが言ったことにすぐに反応して「応援演説」をしてくれる人が一人でもいれば、それが大きな助けとなることを、あなたは何度か経験したはずです。固定され、閉ざされた組織の中では、「数」は間違いなく「力」なのです。

ミーティングをおこなう4人のビジネスパーソン
写真=iStock.com/MarsYu
※写真はイメージです

最後に、「派閥」の類の争いに巻き込まれて去就に迷った場合。

これは議論の分かれるところですが、私の個人的なアドバイスは「表裏を使い分ける」ことです。すなわち、腹の中では、「どちらが正しいか」について、どんな時でも突き詰めて考え、自分の考えを明確にしておくべきですが、実際の行動にそれを反映させると失うものが多いと判断したなら、表面上は態度を曖昧にしておいても、一向に差し支えありません。

「正義感」の類は、本当に重要な局面でのみ、勇気を持って貫けば、それで十分です。

松本 徹三(まつもと・てつぞう)
実業家・作家

1939年、東京生まれ。京都大学法学部卒業。伊藤忠商事、クアルコム、ソフトバンクモバイルで通算51年間勤務。その後7年間は海外で仕事をした後、日本全国のレーダー施設で取得した海面情報を様々な需要家に提供するORNIS株式会社を82歳で創業。著書に『AIが神になる日 シンギュラリティーが人類を救う』(SBクリエイティブ)、『2022年 地軸大変動』(早川書房)など。