どうしても節水したいなら…

よって、どうしても節水をしたいのなら、節水型の便器に交換をすると良いでしょう。

それから、下水道から見て、トイレの位置より奥(上流側)にお風呂や台所があり、そこから流れ出てくる生活雑排水と一緒にトイレの汚物が流されるなら、一緒に到達するかもしれません。またマンションなどの集合住宅では、他の家庭と排水管を共用する場合もあるので、他の家庭の雑排水と一緒に流されるかもしれません。いずれにしても壁や床で見えない部分の話なので、正しく見抜けない場合が多いでしょうから、強引な判断はしないほうが良いと思われます。

なお、ロータンク(便器のそばにある、水が入っている陶器)の中に、水を入れたペットボトルを入れて節水効果を期待する人がいますが、洗浄水量をむやみに減らしてしまうだけでなく、ロータンクの中の部材にぶつかって部材を壊してしまったり、部材にひっかかり、水漏れを起こすことがあるため、お勧めできません。便器のメーカーでも禁止していますので、やめましょう。

なお蛇足ですが、公共トイレの小便器も、むやみに節水をすると、尿の汚れの塊(尿石やソフトスケールと言います)が発生してしまい、詰まりや悪臭の原因になり、大がかりな対策を数年後にしなくてはならないケースが想像されます。よってこれも安易に判断しないほうが良いでしょう。

自動洗浄は、「大・小」をどう判断しているのか

最近は、用を足した後に自動で流れる「自動洗浄機能」が付いているトイレがあります。この場合は、着座している時間の長さで大か小かを判断しています。例えば30秒以上の着座をすると「大」として洗浄され、30秒未満は「小」で流れるそうです。ということは、小便だけでも、ゆっくり座っていたら立ち上がると「大」で流れてしまうことになります。そんな時は、立つ前に自分で手元のリモコンの「小」を押せばOKです。なので、うまく使い分けを行ってください。

SDGs(持続可能な開発目標)が認知され、人々の心に地球環境を守ろうとする意識が高まっています。日常生活で頻繁に使うトイレでも、「何かできないか?」と思って行動につなげることは、素晴らしいことです。しかしその思いが、知識不足のために、新しい課題を生んでしまうケースも、残念ながらありえます。またそれぞれの環境によっても状況が異なります。トイレに関しては、取扱説明書を正しく読んで、疑問があればメーカーのお客様相談コーナーなどに相談をして、判断してください。

取材協力=ニッポー設備 田中友統ほか

白倉 正子(しらくら・まさこ)
トイレ研究家

1973年 群馬県生まれ。1996年、多摩大学経営情報学部卒業。卒論は「トイレ空間における企業の経営戦略」。2023年5月より、世界トイレ協会理事(日本人初)。