「ケイ素=シリカ」が入ったサプリメントが売れるという謎

人間のからだを構成する元素は、酸素が63パーセント、炭素20パーセント、水素9パーセント、窒素5パーセントで、残りがカルシウム1パーセントくらいです。ところが地球の地殻を構成する元素は、酸素47パーセント、酸素が多いことは同じなんですが、ケイ素が28パーセント、アルミニウムが8パーセントと人体と異なります。ケイ素やアルミニウムなど人間では使われないようなものが地殻に多いのです。

最近サプリメントでケイ素が入ったものが売れています。ケイ素とは書いておらずシリカと書いてある。不思議ですね、シリカと書くとなぜ売れるのでしょうか。普通は、全くからだの役に立たない物質です。皆さん、ひょっとして、シリカゲルが水を吸収するように、何かシリカが悪いものを吸収するとでも思っているのでしょうか。本当に不思議で、ミネラルウォーターに「天然水」と書くと売れるようなものなのでしょうね。ゴミやフンが入っていた自然の水の方が電気分解した水よりきれい、という不思議な感覚を持っている日本人が多いのです。

アルミがアルツハイマー病を引き起こすというのはデマ

同様にアルミニウムがからだの中の化学反応に効いているという話はありません。昔、アルミニウムがアルツハイマー病を引き起こすという話(デマ)があって、アルミニウム鍋を捨てた人がいます。全くのデマだったのです。私たちは、アルミニウムは普通の水道の水から1日20ミリグラムから40ミリグラム、飲んでいます。しかし、何も起こりません。これは当然で、アルミニウムはからだの役に立っていないからです。

石浦章一『70歳までに脳とからだを健康にする科学』(ちくま新書)
石浦章一『70歳までに脳とからだを健康にする科学』(ちくま新書)

アルミニウムが一番たくさん入っているのは、海藻や葉もの野菜です。日本人の生活で、一番多くアルミニウムを多く含むものは、皆さんが胃を悪くしたときに飲む芳香性の消化薬です。この消化薬の中には、1回1さじの中にアルミニウムが273.4ミリグラム入っています。1回分で水道水の量の10倍以上入っています。

あとはミョウバンの中にも結構たくさん入っています。漬物の色出しに使います。だから皆さん、黙ってもアルミニウムをたくさん食べているのです。アルミニウムでぼけるとか、アルミニウムでアルツハイマー病になるというのは、一切ウソですから心配しなくていいのです。胃腸薬の中に入っている理由は、胃酸を中和するために入れているだけなのです。

やはり食事と運動は、一生、毎日続けるもので、この2つは皆さんの寿命に直結する大切なものです。ただ漫然と食べるのは良くなく、意識して運動しないといけないことがお分かりになったと思います。

バランスボールを使って運動する高齢女性
写真=iStock.com/Akarawut Lohacharoenvanich
※写真はイメージです
石浦 章一(いしうら・しょういち)
理学博士

1950年石川県生まれ。東京大学教養学部基礎科学科卒業、東京大学理学系大学院修了。国立精神・神経センター神経研究所、東京大学分子細胞生物学研究所助教授、東京大学大学院総合文化研究科教授を経て、東京大学名誉教授。専門は分子認知科学、分子生物学、生化学。難病の解明をライフワークに、遺伝性神経疾患の分子細胞生物学研究をおこなっている。著書に『理数探究の考え方』(ちくま新書)、『運動・からだ図解 脳・神経のしくみ』(マイナビ出版)ほか。