約1500名の育児期職員を約720名のスタッフが支える資生堂

そして最後に、会社自身が女性活躍を意識して職場改革を率先している資生堂(4911)を紹介したいと思います。

資生堂グループは、社員の80%が女性の会社です。女性管理職比率は58.1%を占め、2030年までにあらゆる階層における男女比率を50:50にする、と宣言しています。子育て支援に対しても極めて先進的かつ積極的で、事業所内保育所を先駆的に展開しているほか、育児による短時間勤務制度をいち早く導入、しかも育児期間の代替要員体制を敷いており、約1500名の育児期職員に対して、約720名のサポートスタッフが両立を支えるという徹底ぶりです。これらの取り組みが評価され、世界経済フォーラムとマッキンゼー・アンド・カンパニーによる「The Global Parity Alliance」において、2022年度のDE&I(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)における最先進企業として日本企業で唯一選定されています。

資生堂のCEO魚谷雅彦氏は「世界トップになろう」を合言葉に、老舗病ともいうべき硬直的な状況に陥っていた資生堂をグローバルトップ企業に短期間で育て上げた異色のリーダーですが、まさに女性活躍の職場作りでも世界のトップをめざすこの資生堂をモデルに、一つでも多くの日本の会社が意識改革できれば、日本もまだまだ捨てたものではない、と思える気がします。

これらの、女性活躍を縁の下から支える企業に投資し、その投資資金が活かされ、社会全体が女性フレンドリーに変革していく先に、日本の明るい未来が見えて来ると私は思います。

瀧澤 信(たきざわ・しん)
複眼経済塾取締役シニアESGアナリスト

Second Baptist Middle School卒(米国)、渋谷教育学園幕張高校卒、成蹊大学経済学部経済学科卒。明治生命、グッドバンカー(日本初のESG専門投資顧問)、野村證券を経て、サステイナブル・インベスターを2006年に起業、代表取締役社長就任(現任)。2016年より複眼経済塾株式会社取締役シニアESGアナリスト兼事務局長。琉球大学講師(2007)、清泉女子大学講師(2019~)。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。