「国策に売りなし」政府の少子化対策に投資のチャンスも

さて、「国策に売りなし」とは投資格言ですが、もし日本が国の存亡をかけて少子高齢化に取り組み、そしてそれがたとえば海外の事例を参考に、たとえシングル家庭になったとしても、両親がしっかり子育てをできるような環境整備を前提にするものだと想定したら、どうでしょう。この国策の方向性の先に、さまざまな投資アイデアも出てくると思います。

とくに、日本においては女性が経済的に自立することについて社会がまだまだ冷淡であり、それが女性が子どもを育てていくことのリスクを高めています。女性たちが、本音では子どもが欲しいのに出産を躊躇し迷ってしまうのは、日本の男子も日本の社会全体も、総じて子育てのあらゆるリスクを女性に押し付けていることが背景にあるように思います。

デンマークのように、男性諸君にも社会全体にも子育てに対して極めて重い責任を負わせるような世の中に生まれ変わっていければ、女性も安心して出産を決断できるかもしれません(ちなみに、男性の育休促進などというものは、単なる男性の育児参加のポーズに過ぎず、日々の日常生活に命がけの子育てを組み込む重さとは比べようもありません)。

働くシングルマザーを応援する富士製薬工業

このような視点で考えるとき、女性がもっと自立して活躍できる社会基盤を作ることは、国の至上命題であると共に、その国策に関連するビジネスが少しずつ芽を出し始めていることに気づきます。実際に『会社四季報』2024年2集春号で探してみると、働きながら子育てする女性を応援するビジネスを展開している業界がいくつか見つかります。

その1つは、女性医療に関連する業界です。たとえば、富士製薬工業(4554)は、女性向けに特化した医薬品会社です。同社は、主に不妊治療薬や更年期障害など、女性向けに特化した薬を専門につくっています。

とくに最近は少子高齢化対策の国策の恩恵を受けてビジネス的にも好調です。まず、2022年4月から不妊治療が保険適用になりました。この追い風を受け、富士製薬工業の不妊治療薬の需要が一気に高まっています。また、子宮内膜症治療薬、更年期障害治療剤、月経困難症治療薬など、女性の生活を基盤から支える治療薬を多数販売しています。

たとえば、子育てをしながら仕事をする女性たちが、毎月のように襲われる生理痛から少しでも開放されることは、結果的に社会全体の生産性を向上することに間接的に結びつくのではないでしょうか。女性に特化した医薬品上場会社はほとんどありませんので、分かりやすさの面からも応援しがいがある1社ではないでしょうか。