アメリカから共同親権契約書を取り寄せ元妻と契約

私は離婚して8年ほどシングルファザーをしていたことがあります。日本では共同親権が認められていませんでしたが、私自身が帰国子女であることもあり、周囲に米国での離婚経験がある友人が多数いました。彼らの話を聞くにつれ、自分たちも子どものためには共同親権的な立場を築いた方が良いと考え、アメリカから英語の共同親権契約書を取り寄せ、元妻と契約を結びました。もちろん、これは日本では全く法的拘束力はなく弁護士も猛反対していましたが、法律よりも前に、私たち自身が最善だと思う選択をすることの方が重要でした。

共同親権では離婚したあとも、親としての権利と義務が発生します。親同士の仲が仮に良好でなかったとしても、子どもの前では親としての役目を果たさねばなりません。いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス)等の暴力的な問題等、極端な状況がない限りにおいては、親同士は大抵の場合、子どもの前では大人の対応ができるものです。

また、共同親権では、離婚した親同士が離れて暮らしていても、子どもに親を合わせなければなりません。遠くに住んでいれば、そこまで連れて行って会わせる義務がありますから、結果的に離婚後も近くに住むケースが多くなります。

離婚同意書と結婚指輪を前に、向かい合う男女
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日本も婚外子を育てやすい政策を打ち出す可能性大

私たちの場合も、単独親権の状況となっていれば、元妻は経済的事情から実家に戻らざるを得なくなるところでした。そうなれば、私は東京、元妻は千葉、と遠距離となり、子どもは私たちのどちらかの親と簡単に会うことができなくなります。また、当時子どもは小学生でしたが、学校も転校しなければならなくなり、その精神的負担は甚大となることが予想できました。

そこで、私たちの場合は、疑似的共同親権を軸に、元々住んでいた学区内のアパートの上下の階に別れて住むことにしました。そうすれば、お互いの私生活ではプライバシーが保たれ、他方、外の階段にはなりますが、子どもは自由に上下を行き来できるようになります。

この方法は、意外とうまくいったと思います。離婚当初はアパートの上下とはいえ、精神的には非常に距離感があり、ほとんどコミュニケーションも希薄でしたが、ときが経つとともに、子育てという共通のライフワークを通じて少しずつ対話も増え、10年近くかかりましたがいまでは「わが子の父母」という結婚とはまったく異なる、不思議な家族的連帯と信頼関係が生まれていると思います。

共同親権は婚外子が増えるひとつのきっかけになると思いますし、出生数の低下が止まらない日本では、海外の状況を参考にして婚外子を育てやすい政策を本格的に打ち出す日も近いと思います。

それによって働きながら子育てする人を応援する商品やサービスを提供する企業も増えるでしょう。