夫ではなくペットを選ぶ女性

次に、別の調査を見てみましょう。

ペットとの関係についてインタビュー調査をしたとき、ある既婚女性(50代専門職、子どもなし)から、「夫よりペットが大事、もし無人島に誰かと流されるのであれば、夫ではなくペットのワンちゃんを選ぶ」と言われました。

より詳しく聞くと、彼女は夫と仲が悪いわけではありませんでした。夫婦で旅行に行くなど、傍から見れば、一般的な日本人中年夫婦よりよほど親密に見える。しかし、彼女にとっては、ペットと遊ぶときが最も幸せを感じる時間だというのです。

ペットに関する調査結果の一部を紹介しましょう(図表2)。

犬かネコを飼っている人(24~65歳対象)で、ペットと同じ布団で寝る人の割合は、ほぼ毎日35.5%、数日に1回は10.7%と、ほぼ半数の人が、ペットと一緒に寝るのが常態化しています。

【図表2】ペットと同じ布団(ベッド)で寝る(犬・ネコ限定 487ケース)
ペットとの親密関係調査(2022年10月実施/中央大学特定研究費助成)[調査総数2225人]

愛情を分散させて満足する社会

ペットと一緒に寝る一人暮らしの人が多いのは、わかります。女性の一人暮らしでは、犬やネコを飼っている人の8割以上がペットと共に寝ています。ちなみに、私のところのネコちゃんも、毎晩、私の布団の上で寝ていました。残念ながら一昨年、19歳で亡くなりましたが。

寝起きを共にしたネコのまりちゃん。
2020年筆者撮影
寝起きを共にしたネコのまりちゃん。

ただ、配偶者がいる人であっても、男女とも半数近くがペットと布団を共にしているのです。もちろん、夫婦とペットが2人プラス1匹で、川の字になって寝ているケースもあるかもしれませんが、配偶者とは別のベッドで寝ている人も多いことでしょう。

このように、現代日本社会では、配偶者や恋人がいても、キャバクラやペットなど別の所に、親密な関係をつくることが常態化しています。いや、昔からそうだったのかもしれません。いわば、愛情関係を1人に絞ることなく、分散させて満足させようとするのが、日本社会の特徴なのかもしれません。

こうした現象を、「愛の分散投資」と呼んでみます。この連載では、私自身が行ったさまざまな調査データも基にしながら、分散した愛情関係の広がりについて明らかにしていきたいと思います。御期待ください。

山田 昌弘(やまだ・まさひろ)
中央大学文学部教授

1957年、東京生まれ。1981年、東京大学文学部卒。1986年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。専門は家族社会学。学卒後も両親宅に同居し独身生活を続ける若者を「パラサイト・シングル」と呼び、「格差社会」という言葉を世に浸透させたことでも知られる。「婚活」という言葉を世に出し、婚活ブームの火付け役ともなった。主著に『パラサイト・シングルの時代』『希望格差社会』(ともに筑摩書房)、『「家族」難民』『底辺への競争』(朝日新聞出版)、『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』(光文社)、『結婚不要社会』『新型格差社会』『パラサイト難婚社会』(すべて朝日新書)など。