性的サービス産業に行く男性は既婚者が多い
そんな背景をもとに、ある学会誌に「独身中年の生活実態」という論文を書きました(『家族社会学研究』31巻②号/2019年/日本家族社会学会)。その中で、私も参加した次のような調査結果を引用しました(図表1)。
すると、この論文を読んだ女性研究者から、「結婚してない男性より、結婚している男性の方が、キャバクラや性的サービス業(いわゆる性風俗)に行っている割合が高いという結果に驚いた」という感想をもらいました。
「妻がいないから行く」のなら理解できるが、妻がいるのに、「なぜ、キャバクラや性的サービス業に行く必要があるのか?」という疑問です。
この調査では、独身者のうち「恋人の有無」も集計していますが、そこでも、キャバクラや性的サービス産業などに行く人は、「恋人がいない人」より「恋人がいる人」の方が多いという結果が出ました。
「なんで結婚してるのかわからない」
みなさんはどのような感想を持ちますか。
男性の平均初婚年齢は、約30歳です。ですから、30代前半既婚者といえば、結婚してそれほど経っていない男性です。そうした中で、どちらかに行く人は約20%。つまり、五人に一人はキャバクラか性的サービス業(どちらか、もしくは両方)に行き、そこのキャストを恋愛対象にしている、つまり、親密な関係を持っている、もしくは親密になりたいと思っているという結果です。
私が教えている大学の授業でこの結果を話したところ、ある女子学生からこんな感想をもらいました。
「私、ガールズバーでアルバイトしてたことがあるんですが、そこに来る男性は、奥さんの悪口ばっかり言ってました。あれじゃあ、なんで結婚してるのかわからない」と。
男性にも言い分があるでしょう。妻を大切にしていないわけではないとか、妻とは性的関係が終わっているので、風俗に行くのは単なる遊びでのことだから、とか――。
先の女性研究者の言い分のように、キャバクラや性的サービス業に行く男性は、恋人や配偶者がいない、つまり、一緒にお酒を飲んで楽しく話をする相手や性的欲求を満足させてくれる相手がいない。だから仕方なく行っているはず……。行く人も実は、恋人や配偶者を最優先の相手にしたいと思っているはず……。未婚化が進み離婚が増え、恋人がいない人も増えているから、キャバクラや性風俗に行く人が増えているのだ……。そう思いたくなります。
しかし、現実はそうではありません。配偶者や恋人がいても、そのような所に行く人は多いのです。