育児をしながら事業部長に
【海老原】僕は、イクメンをしながら編集長や事業部長をやっていた身として、そんなに難しいとは感じませんでした。当時でさえ保育所は19時半まで預かってくれたので残業も可能でしたし、平日は共働きの妻と半々で送迎を分担して、週のうち1日だけはベビーシッターを入れていました。お迎え当番ではない週3日は残業もできますし飲み会に参加することも可能です。結果、2人とも育児中も仕事や余暇の時間を持つことができて、それほど無理せずに過ごせたんですよね。育児すると何もできなくなる、というような風説が良くない気がしています。
【上野】海老原さんのケースはレアケースじゃないでしょうか。今でも毎日のように22時、23時まで残業という男性はたくさんいますし、高スペックの女性はそうした高スペックのエリート男性を選ぶことが多い。結果、そうした男性を選んだ女性は、夫に育児戦力としての期待をしないという構造ができあがってしまっています。
最近は男性の育休取得率が17.3%まで上昇していると聞きますが、あれは数字のトリックですね。3日から45日間取得した人もすべて含めた数字です。それだけでなく、育休取得した男性は、査定や評価が下がっているんじゃないでしょうか。もちろん企業はオモテ向きは認めないでしょうが。
エリート男性ほど育休を取らない大問題
【海老原】確かに、育休取得率には1日の人も1週間の人も全部入っています。査定に関しては実態を把握するのが難しいですね。なぜなら、育休をしっかりとる男性には、もともと低査定の人が多かったりするんですよ。上野さんがおっしゃる通り、エリート男性は育休をとっていないか、とっても短期間の可能性が高い。そこは非常に問題だと思います。
【上野】エリート男性は育休をとらない、もしくは会社がとらせない構造があると。そうすると、子どもが生まれたことによって働き方が変わるほどの変化を経験した、海老原さんのような男性はまだ非常に少ないわけですね。
【海老原】ただ、夫婦どちらも正社員の共働き家庭では、ここ最近、男性の家事育児時間が1日114分にまで伸びてきています。この時間はまだまだ女性の3割に過ぎませんが、それでも経験した男性は妻に向かって「家事育児なんて簡単だろ」なんていわなくなったと思うんですよ。
【上野】そりゃそうです。自分でやってみればわかります。ですから、岸田首相が育休中のリスキリングを提案したときはものすごく批判されましたよね。ただ、男性の家事育児時間がわずかでも伸びたのには、コロナ禍による在宅勤務の影響もあったと思います。それだけでなく、育休取得中の男性が、その時間を育児にではなく、趣味に使っているというデータもあります。