※本稿は、ディラン・ヘルナンデス、サム・ブラム、志村朋哉『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
英語が要る? 要らない?
【トモヤ】ESPN(アメリカのスポーツ専門チャンネル)コメンテーターのスティーブン・A・スミスが、大谷が通訳を使っている限り野球界の「顔」にはなれないと発言して、アジア人コミュニティーから人種差別であるとの批判を受けた。
【サム】そもそも、大谷が野球の「顔」になるためにメディアと話す必要なんてないことを理解した方がいい。英語を話す必要はないし、アメリカ文化を受け入れる必要もない。彼は好んで受け入れているみたいだけど。
大谷が野球界の「顔」となれたのは、フィールドでの活躍や立ち居振る舞い、チームメイトとの接し方、そういったことが理由だよ。
【トモヤ】大谷が実際どのくらい英語を話せるのかは多くの日本人が気になっているところ。
【サム】彼が英語を話すのを聞いたことはある。CMや23年のオールスター戦の前なんかにも話していた。英語を話す人たちと一緒にいる時は英語を話している。彼は自分がやりやすいようにやっているんだと思う。でも公のインタビューでは話さないから、一般の人には英語を全く話していないと思われるんだろうね。でも、誰かにもっと英語で話せなんて言うつもりはない。
もしかしたら、僕が第二言語を習得したら、他の人にも、もっと使った方がいいとか言うのかもしれない。でも僕は英語しか話せないし、新しい言語を習得する予定もない。だから偉そうに批判なんてできない。文化の違いもあるのかな。僕に言えるのは、日本語を話している大谷は、アメリカではもちろんのこと、世界でも絶大な人気があるということ。
チーム内の人間関係においては…
【ディラン】マーケティングの観点で言えば、大谷が英語を話すかどうかは関係ないと思う。でもチーム内での人間関係においては影響はあると思う。
たとえば、サッカーの中田英寿はすごかった。何カ国語も習得していて、プレーしていた国の言葉で意思疎通できていた。イタリアでの初めての記者会見を、イタリア語でやってのけるんだから。チームメイトやコーチとコミュニケーションをとる術を身につけていた。中田と同世代で天才と呼ばれていた財前宣之は、同じイタリアに行った時に、言語の壁が原因で無理をして膝を故障してしまい、期待通りのキャリアは送れなかった。
大谷には素晴らしいコミュニケーション力がある。前にも話したけど、WBCの決勝戦の前のスピーチは美しかった。チームのリーダーになる資質もあると思う。