大谷は自分の文化を乗り越えている
【ディラン】大谷はその点では、普通の日本人と違う。完璧でなくても構わない。それよりも勝ちたいと思っている。そういう面で自分の文化を乗り越えている。WBCメキシコ戦の9回に打った球は、明らかなボール球だった。普通の日本の選手だったら、100人中99人は、あの球を振らないと思う。でもラテン系の選手たちは振る。そのメンタリティーが、野球に限らず色々なスポーツで彼らの有利に働く。
中南米では、即興が全てみたいなところがある。世界最高のサッカー選手の多くがラテンアメリカ出身なのには理由がある。彼らはのびのびと自由にサッカーをしてきた。ロナウドやマラドーナはその典型。型にはまっていないから、信じられないようなプレーをする。大谷も、そうした偉大な選手だと思う。
周りを気にしすぎない偉大な三選手
大谷とイチローと野茂英雄が、僕にとって日本の偉大な三選手なんだけど、その理由は周りのことを気にしすぎなかったから。
ダルビッシュ有は日本人じゃないという日本の記者がいたんだけど、僕からすればダルビッシュは普通の日本人以上に日本人ぽい。ハーフであるという自意識が強いがゆえに、いつも自分は日本人であることを証明しようとしてきたんだと思う。
アメリカに来た当初は、「日本の野球を代表してここに来ている」といつも語っていた。日本の打者と対戦した時は、いつも相手の日本的な技術を褒め称える。三振に切ってとった相手に対してもだよ。彼には、周りの人のことを考えすぎてしまうところがある。メジャーは競争の激しい世界で、ある意味「嫌な奴」にならないと生き残っていけない。
1980年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校卒。ドジャースとエンゼルスの地元紙ロサンゼルス・タイムズでスポーツコラムニストを務める。それ以前はサンノゼ・マーキュリー・ニュースに勤務。日本人の母を持ち、スペイン語と日本語も流暢に話す。
1993年生まれ。シラキュース大学卒。2021年からスポーツ専門メディア『ジ・アスレチック』のエンゼルス担当記者を務める。それ以前は、ダラス・モーニング・ニュース、デイリープログレス、トロイ・レコードでスポーツ記者として勤務。AP通信スポーツ編集者賞やナショナルヘッドライナー賞を受賞。
1982年生まれ。国際基督教大学卒。テネシー大学スポーツ学修士課程修了。英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。米地方紙オレンジ・カウンティ・レジスターとデイリープレスで10年間働き、現地の調査報道賞も受賞した。大谷翔平のメジャーリーグ移籍後は、米メディアで唯一の大谷担当記者を務めていた。著書に『ルポ 大谷翔平 日本メディアが知らない「リアル二刀流」の真実』、共著に『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』(共に朝日新書)がある。