専業主婦優遇策でトクするのは主婦じゃない
間違って「専業主婦優遇策」と呼ばれてきたこの制度から、本当にトクをするのは誰でしょうか。
まずトクをするのは、それまで妻の年金保険料を自分のフトコロから払ってきた夫です。彼らは、その支払いを逃れました。
そしてパート主婦を雇っている使用者も、彼女たちは被扶養者として夫の健康保険でカバーされますから、本来労使折半で負担しなければならない保険料を負担しなくてすみます。
さらに彼女たちは、就労調整をするため低賃金でも文句を言わずに働いてくれますから、その点でも使用者はトクをします。
トクをするのは専業主婦の夫とパート主婦を雇っている経営者ばかり。ほとんどが男性でしょう。
こうして制度が女性の就労を抑制してきました。だから共働きといっても妻は家計補助型の非正規、低収入に甘んじています。これまでの性別役割分担が「夫は仕事・妻は家事育児」だとしたら、今は「夫は仕事オンリー・妻はあいかわらずワンオペの家事育児に加えて家計補助型就労」です。これを「新・性別役割分担」と呼びます。結果、外で働く有償労働と家で働く無償労働を合計した妻の労働時間は長くなり、妻の負担はあきらかに増えました。
1948年、富山県生まれ。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。女性学、ジェンダー研究のパイオニア。現在は高齢者の介護とケアの問題についても研究している。京都大学大学院博士課程修了後、平安女学院短期大学助教授、京都精華大学助教授、メキシコ大学院大学客員教授、コロンビア大学客員教授などを歴任。1994年、『近代家族の成立と終焉』(岩波書店)でサントリー学芸賞受賞。著書に、『家父長制と資本制』(岩波現代文庫)、『おひとりさまの老後』(文春文庫)、『女の子はどう生きるか』(岩波ジュニア新書)、『アンチ・アンチエイジングの思想』(みすず書房)など多数。
