沿線ごとに住んでいる人の傾向がある

沿線ごとに、住んでいる人の傾向がある。このあたりは、複数の沿線で暮らしてきた人にはよくわかるだろう。

たとえば、国政選挙や地方自治体の選挙結果を見ても、自民系が強い地域、非自民が強い地域と分かれる傾向がある。この国全体でもっとも支持されている政党は自民党ではあるが、地域によっては非自民がそれなりに強いということもある。

また、特定の職業の人が集まっている沿線というのもある。私鉄ではないが、表現活動をしている人はどういうわけか中央線沿線に集まることが多い。大卒の公務員や会社員の多い沿線というのもある。子どもの教育を大切にしたい、という人は中学受験の盛んな沿線に住むのが妥当だろう。

ジェンダーの違い、学歴や職業の違い、そして地域の違いは、人の考え方に大きく影響する。

それらは相互作用する。また、立場や考えが異なる人と同じ空間にいると、強い違和感を覚えることがあるだろう。同様に、自分の住む沿線では当たり前の価値観が、別の沿線では珍しい価値観であるということもけっして珍しくない。本来は、多様性のなかで人々が自立した精神を持ち、個人個人の人生を生きるべきだが、どうしても周囲の状況に拘束される。都市社会学の研究などを見ても、同じ都市圏のなかで似たようなタイプの人が同じ地域に住むということは示されている。

したがって、東京圏でどこかに住もうというときには、自身の立場や考え方に見合った沿線を選ぶということが重要である。

電車の車内
写真=iStock.com/Mindaugas Dulinskas
※写真はイメージです

ファミリー層は一生住むことを前提として選ぶ必要がある

1人暮らしの大学生なら大学に電車1本で行ける、という理由でいいと考えられるが、社会人になったり、あるいは結婚したりとなるとそうもいかない。

とくに、結婚してファミリー向けの住宅に住む場合、その沿線に、さらにはその区市町村に一生住むということを想定しなければならない。子どもを育てたり、不動産を買ったりすることを前提として、どの地域を、どの沿線を選ぶかを真剣に考える必要がある。

その際に重視すべきことは、沿線の生活環境と、価値観である。ここを見極める際に失敗、とくに不動産を購入する際に失敗したら、損失が大きい。

どの沿線を選ぶかは、あなた自身がどんな立場にいるかということと、あなた自身がどんな考えを持っているかということをよく考えてからでないと、うまくいかないことになるだろう。

家族や家庭の事情があり、どうしてもその場所で生活しなければならない、ということももちろんあるだろうが、場合によっては、生まれ育った沿線から離れる、あるいは離れないという決断をしたほうがいいこともあるのだ。