公教育が抱える課題
これまで見てきたとおり、私立中高一貫校の教育の質は高い反面、誰しもがその教育にアクセスできるわけではない状況となっています。これは教育機会の平等という観点から見ると、大きな課題です。
この課題を解決するには、何が必要となるのでしょうか。
現状では私立中高一貫校が市場で生き残っていくために公立校よりも質の高い教育を提供し、それを経済力のある世帯が子どものことを考えて選択するという構図があります。これは、双方が合理的な選択を行った結果であり、妥当性があると言えるでしょう。
教育機会の平等という理想に近づくためには、公教育の充実が必要だと考えられます。
もし公立校が質の高い教育を提供できていれば、お金と時間をかけてわざわざ私立校に行かせる保護者は減るでしょう。また、経済的な理由から塾に行けない子も、公立校から偏差値の高い大学を目指せるようになります。
このような公教育の充実が教育機会の平等につながっていくでしょう。教育格差を拡大させないためにも、国や自治体による公教育充実への取り組みが求められます。
(*1)首都圏模試センターHPより
(*2)近藤絢子(2014)「私立中高一貫校の入学時学力と大学実績――サンデーショックを用いた分析」『日本経済研究』, 70(3), pp.60-81.
1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。