どんな悩みも「事実」と「感情」を切り離して考える

「メタ認知」(物事を超越した場所から客観的に捉えること)という言葉があるように、自分を俯瞰するように客観視すると、落ち着いた対処ができるようになります。

これは、人間関係だけではなく、どんな悩みにも応用できます。

例えば「残業が多くてつらい」という悩みがあったとします。

「残業が多い」というのは事実。「つらい」は感情。

「残業が多い=つらい」というのは自分の解釈です。

なぜなら、「残業が多い」という事実に対して、つらいと思わない人もいるからです。

オフィスでノートパソコンを使用し、ため息をついている女性
写真=iStock.com/kokouu
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このように、事実と感情を切り離して冷静に考えたときに、自分の本当の目的が見えてきます。

「残業が多くてつらいと感じていたのは、自由な時間がほしかったからなんだ」

と思えば、転職の決心がつくかもしれませんし、

「残業が多くてつらいと感じていたのは、やらされ仕事ばかりで時間が潰れているのが嫌だったからなんだ。だったらやらされ仕事をなんとかする方法を考えてみよう」

と、転職ではなく「今の仕事をどう変えるか」という発想になるかもしれません。

このように、「つらい」という感情だけではなく、事実と感情を切り離して考えることで、自分の「認知」を見つけることができます。

そして「認知」を見つけたら、本当はどうしたいかという「目的」がより深くわかるようになります。

このように、アドラー心理学の「認知論」と「目的論」を組み合わせることで、人間関係の悩みが解決できることが多いのです。

自分を傷つけられるのは自分だけ

誰かに傷つけられて苦しいとき、または他者と比較して劣等感を抱いて悩むとき。

お伝えしたいのは「自分のことを傷つけられるのは自分だけ」ということです。

悪口を言われたり、SNSで誹謗中傷の対象にされたりしたら、たしかにショックですよね。でも、それを受け止めて傷ついているのは自分の解釈なのです。

これもアドラー心理学の「認知論」です。

同じ悪口を言われても、傷つく人と傷つかない人がいます。

「本当に仕事できないやつだな」と言われたとしても、自分の仕事ぶりに自信があれば気にならないはずです。

親から「早く結婚しなさいよ」と言われたとしても、「結婚できない自分」にコンプレックスを感じていなければ傷つきません。

このように自分に自信があって自分のことが大好きであれば、傷つけられることはありません。

「あなたは間違っているよ」「あなたのことはもう信じられない」というような言葉を突きつけられても、ショックを受けるのか、「しょうがないか」とサラッと受け流せるかは、自分次第。

肯定するのも否定するのも、自分で選ぶことができ、自分を傷つけることができるのも自分だけです。