乳房再建のために休暇をとることを言いにくい

日本では「乳房再建」という言葉自体のなじみも薄く、どのような手術なのか一般的にはまだ知られていない。自身も乳がんを罹患し、2008年に乳房再建を経験したNPO法人エンパワリング ブレストキャンサー理事長の真水美佳氏は、乳房再建にはさまざまなハードルが立ちはだかると指摘する。

「われわれが2013年から続けているアンケート調査でも、乳房再建のハードルとして、再建のために休職することを職場に言いにくいという声や、周囲の無理解が多く寄せられます。“命が助かったんだから、乳房がなくても仕方ない”、“高齢だから再建は必要ない”といった偏見や、美容目的の豊胸と同じように捉えられることもあると聞きます」

加えて、首都圏と地方との医療格差も大きい。地方では乳房再建を行う専門医の数が少なく、病院の選択肢も限られている。家の近くに希望する乳房再建術を受けられる病院がなく、結果的に不本意な術式になってしまったというケースもあるという。

現在、日本では乳房再建手術は保険適用(自家組織再建は2006年に保険適用、人工物再建は2013年に保険適用)だが、主治医から積極的な情報発信がなく、保険適用で再建ができることを知らなかった乳がん患者も実際にいたという。

「乳房再建に関する理解を広げ、再建を望む人は年齢を問わず、誰でも一定水準の再建手術を受けることができるよう、社会全体の理解と医療の均一化が必要です」(真水氏)

乳房再建手術は保険適用で実質負担は9万〜14万円

乳房再建手術とはどのような手術なのだろうか。これまでに1万件以上の人工物(インプラント)による乳房再建手術を行ってきたブレストサージャリークリニックの岩平佳子医師はこのように説明する。

「乳房再建手術は時期によって、一次再建(乳房を切除するのと同時に再建を行う)と二次再建(過去に切除した胸に対して再建を行う)に分けられます。また、手術方法はインプラントを使う方法、自家組織(お腹や背中など他の部位から筋肉や脂肪組織を移植)を使う方法、インプラントと自家組織を併用する方法があります。いずれの術式も保険適用です」

インプラントを使って再建する場合は、エキスパンダー(縮んだ皮膚組織を拡張させるためのシリコン製の風船のようなもの)を挿入し、1〜2カ月に1度のペースで通常6カ月以上かけて外来で生理食塩水を注入し、組織を拡張させる。十分伸びたところで、その人の胸の大きさに合わせたサイズのシリコンインプラントに入れ替える手順だ。

「保険適用のインプラントは現在3社で、さまざまな形・サイズがある。乳輪乳頭の位置や、幅・高さ・厚みに合わせて最適なインプラントを選びますが、患者側からも自分のライフスタイルを積極的に発信してくれれば、その人に最も合うインプラントを選ぶヒントになります。医師とのコミュニケーションは非常に大事です」(岩平医師)