相手に文句を言う
3つ目は、ただ相手に文句を言うパターンについてです。
これはケンカでおしまいになりますから、注意を与えるという目的でするものではありません。
在来線に始発の駅から乗ると、たくさんの買い物袋を座席に置き、いくつもの席を占有している若い男性がいます。
「よくこんなふうに物を置いておくなぁ」
「ちがっ」
「何が違うんだよ」
という会話は、つい先日聞いたものです。
注意3パターンは組織の中でも使える
ここまで述べてきたことは、実は、会社のような組織の中で、人に注意を与えるときも同じように働く原則です。
1つ目から3つ目のパターンがあることに変わりはなく、区別しておくことが大切です。
1つ目のように、(丁寧な言葉遣いで)注意を与えることは、自分ではしたくないという人が多いのではないでしょうか。
上手に注意を与えられない社会には、少し注意をされただけで、必要以上に騒ぎ立てる人も多いものです。
相手にきちんと謝ったり、説明できないだけでなく、陰で隠れて悪口を言うなどの不健康な反応もあります。
いろんな所でいろんな人に見られている
自由席での話ですが、私はあるときから、余程車内が空いていなければ、決して隣の席に荷物を置かないようになりました。
それは、東京方面へ向かう新幹線の自由席に名古屋駅から乗り込んだときです。
同じ車両の中に、大阪方面から乗ってきていた取引先の人を見かけました。
会社ではマネジャークラスの人でしたが、その人は自分の周りにたくさんの荷物を置いて、名古屋駅から乗った乗客が自分の隣に来ないようにしていたのです。
失礼ながら、その姿は実にみっともなく、自分は絶対にしないと肝に銘じるのに十分だったのです。
従業員の公共の場での振る舞いについて、企業の幹部が気にして、自社の人事部などに連絡をしてくる――これは結構よくあることです。
「電車の中で当社の営業部員たちが、年配者が乗っているにもかかわらず、座席を占領し、大声で話していた」とか、「通勤時に漫画を読んでいる社員がいて、みっともない」など。
偉い立場の人になると、直接注意するだけでなく、全社的に徹底するようにという意味なのでしょう。会社のしかるべき担当部門にも伝えてくることがあるのです。
私たちは、いろんな所でいろんな人から見られています。そのことをあらためて認識したいものです。
相談者の方のように、モラルの乱れを嘆く若い方がいらっしゃることで、むしろ安心できる。こう感じるのは、私だけではないように思います。
もともとグローバル人材育成を専門とする経営コンサルタントだが、近年は会社組織などに存在する「ハラスメントの行為者」のカウンセラーとしての業務が増加中。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では、非常勤講師としてコミュニケーションに関連した科目を受け持っている。著書に『好きになられる能力 ライカビリティ』(光文社)『英語で学ぶトヨタ生産方式』(研究社)『英語で仕事をしたい人の必修14講』(慶應義塾大学出版会)など多数。