学校プール製造大手が事業撤退

学校プールの廃止や水泳授業の中止に加え、コロナ禍の需要減少のあおりを受け、学校のプール製造では大手「ヤマハ発動機」がプール事業から撤退することも、今年7月に報じられた。軽量で強度の強いFRP(繊維強化プラスチック)製では学校のプールでトップシェアを誇ってきたが、2022年度にはプール事業は赤字に転落していたという。

学校プールを供給できる企業は他にもあるが、大手であっても学校プール事業で採算が取れなくなっているというのは衝撃的だ。学校のプール事業は斜陽を迎えつつあるということだろうか。本稿ではプールをめぐる教職員や保護者の費用負担、労働負担を踏まえつつ、水泳授業の意義とゆくえについて考えていこう。

冬も水を抜かずに管理

プール――それには想像以上の費用負担と労働負担がある。費用負担でいえば水道代や衛生的に保つための薬剤、その設備もあるし、保護者側では水着や帽子などもある。高等学校では水泳の授業は必須ではないため、プールがない学校も多い。しかし、義務制の多くの学校にプールがあり、その維持管理の多くは教職員に任されているし、水着等は保護者の負担に任されている。

まず、プール設備の管理を考えていこう。水泳指導を実施しない時期(夏季以外)でも水は抜いてはならない。水を張っておかないと日光や紫外線により、内部が劣化してしまうため、それを防ぐという学校施設設備の管理上の問題もあるが、消防水利としての問題が大きい。

消防水利とは消防に活用する水の利用である。消防水利については消防法第20条第1項により消防庁が勧告し、そのなかに「プール」が含まれている(消防水利の基準)。学校のプールも例外ではなく、水泳指導の時期以外でも水を抜くことなく管理が必要となる。また、災害や非常事態に生活用水として使用されることも想定されている。そのため、清掃などにより一時的でも水を抜くときは所管の消防署へ連絡が必要になる。

水を抜くといえば、その直前に水泳指導以外でも重要な役割をプールは果たす。小学校では理科や生活科の授業で水生昆虫を採取するという活用場面があるのだ。多くの学校ではその時期にヤゴを採取し、学習の時間を設けている。少々話が脱線したが、プールには直接的意義の他にこのような間接的な意義も含まれてくる。

水の入れ替えに1回20万円

水の入れ替えには相当な費用がかかる。25mプールで約300立方メートルの水が必要になり、20万円程度が必要となるのだ。お風呂のように毎回水を入れ替えることはできず、シーズン中は水質を一定水準まで維持することが必要となる。

24時間フルタイムで濾過機を稼働させ、管理している。気が付かないうちに故障をした場合は水の入れ替えが必要なほど水質は悪化していく。そのため、シーズンごとに維持費(消耗品交換代や技術料等)で数十万円、その外にも必要な薬品等(塩素や珪藻土)で十数万円かかってくる。

噴水の水面
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