命令せずに伝える方法がある

この時期は誰でも多少、高圧型に寄るのではないでしょうか。たくさんのルールを教えていく中で「早く宿題やりなさい」「忘れ物がないように確認しなさい」「あれをやりなさい、これをやりなさい」とついガミガミ言ってしまうのです。

ただし、安全に関することと社会規範以外は、命令せずに伝えられることです。

「宿題はいつやる? 丸つけするから、できたら教えてね」
「明日の持ち物を一緒に確認しようか。特別な持ち物はないかな?」

忙しくて毎回そんなふうに言っていられないんですよ……という声が聞こえてきそうですが、ときどきでもいいから子ども自身に考えさせたり、一緒に考える姿勢を見せたりすることが大事です。

鉛筆を鼻の下にあてて、自由に試行している少女とそれを見守る両親
写真=iStock.com/Hakase_
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わが子を指示待ち人間にしないためには

命令を待たず、子ども自身が、主体的に動けるようになるにはどうしたらいいでしょうか?

アメリカの心理学者アトキンソンは、達成動機理論を提唱し、目標達成について説明しました。「達成動機」とは、目標を達成したいという前向きな気持ちのことです。

達成動機の高い人は、「努力すれば成し遂げられる」という想いが強く、課題に対して果敢に取り組むのが特徴です。

一方、失敗を回避したいという後ろ向きな気持ちが「失敗回避動機」です。失敗回避動機が高い人は、自分には到底できないだろうという気持ちが強く、チャレンジすることができません。

人はみな「達成動機」と「失敗回避動機」の両方を持っています。ただ、どちらが強いかで物事への取り組み方が変わります。

高圧的な子育てをすると、子どもの「失敗回避動機」が強くなります。親の言う通りに物事を行わなかったときの罰をおそれて、行動することが普通になっているからです。また、親の要求が過度であるほど失敗する確率が高くなり、成功体験を積むことができません。ますます「自分にはできない」という気持ちが強くなります。

失敗しても、それを前向きにとらえることができればいいのですが、罰が与えられるような環境ではそれどころではないでしょう。