指示待ち人間が陥ってしまう闇バイト
「~しなさい」と命令して人を動かすのはラクです。
子どもに対して「~しなかったら鬼が来るよ」「~できなければ食事抜きだよ」などと恐怖を与えてやらせるのは、簡単です。しかし、それでは子ども自身の主体性が育まれません。自主的に判断して動くことができない子になってしまいます。
主体性が低ければ、社会でやっていくのは難しいと言わざるを得ません。いまの時代、いわゆる「指示待ち人間」を歓迎する職場はまずありません。
本書で紹介している大学生のトモヤは、闇バイトを通じて特殊詐欺に加担することとなりました。
犯罪だとわかっていながら、躊躇せずにやりました。指示された通りに動くだけ。
それは、「息子にはいい大学を卒業して大企業に就職しでほしい」と願う父親が勉強面だけにとどまらず、着る洋服や食べるものに至るまで、指示を出してくるという家庭環境で育ったトモヤにとって馴染みのあることです。指示されたら、何も考えずにその通りにすればいい。「それは本当に正しいのだろうか?」という疑念を封じ込め、命令に従いました。
普通のバイトがつとまらず闇バイトで捕まる非行少年たち
こういった闇バイトで捕まる非行少年たちは、多くは自立が難しい子です。普通のバイトがつとまらず、現状を打開するような策を考えることもできません。指示通りに動くことはできるし、ある意味真面目なのですが、それだけでは社会生活ができないのです。
子どもに対して支配的で親の言う通りにさせようとする「高圧型」に傾きがちな親は、なるべく命令口調をやめるよう意識してみることです。
「~しなさい」と言わずに、伝えるにはどうするか考えるのです。命令口調をやめようとするだけでも、発見があるはずです。
もちろん、子どもに「~しなさい」「~してはいけない」と命令すべきときはあります。安全に関することがそうです。
「道の端を歩きなさい」
「赤信号を渡ってはいけない」
身体、生命の安全を守るためですから、本人に考えさせる必要はありません。しっかり伝えて、守らせなければなりません。
また、社会規範については命令口調で伝えていいでしょう。
「人の物を勝手に盗ってはいけない」
「順番を守りなさい」
これらは本人の判断能力や倫理観が育つ前に、親が教えるべきことです。
文部科学省の発達段階には、小学校低学年の時期は「大人の言うことを守る中で、善悪についての判断や理解ができるようになる」とあります。小学校入学前くらいから低学年の頃は、安全のためのルール、社会規範をとくに意識して伝えることが大切です。