自宅の防犯設備を強化し、スマホの情報漏洩対策をしっかり

次に「接近の制御」である。物理的空間およびインターネット空間において、ストーカーを寄せ付けない工夫である。例えば、住んでいる家やマンションの防犯設備を強化する、電話番号やメールアドレスを変更し、SNS等では不用意な許可や取り扱いに注意する。非通知での電話を着信拒否に設定にする、といった方法である。

三つ目の「監視性の確保」は、監視カメラなどの設置や家族・近隣の人の目を増やすことである。待ち伏せ、付きまといなどの行為に対し、家族や近隣の目が抑止力を発揮する。また、歩行中に所持する防犯ブザーを鳴らすことで他の通行人などの視線を集めることも効果的と言える。

最後に、「領域性の強化」である。プライベートな空間や品物における管理を徹底することである。自宅や職場などの物理的空間に、不用意に入り込める場所が無いかどうか確認し、あればそこを修繕する、もしくはそのエリアに近づかない。普段使っている自動車や所持品を常に確認・点検する。PCやスマートフォン等を、他人が容易に操作できるような状況にしない。また、SNSなどでの情報発信に注意を配り、居場所や活動範囲などが分からないように管理することも重要である。

暗闇でスマートフォンを使用してハッキングしているハッカー
写真=iStock.com/xijian
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ストーカーが凶悪化したら、家族だけでは防げない場合も

恋愛関係を拒絶した後などに、ストーカーの行動がエスカレートし始めたら、前記の対応を徹底し、速やかに警察に相談する必要がある。また、ストーキングの日時や内容などの情報を保存しておき、被害者本人や家族の判断ではなく、状況や保存した資料に基づく警察の法的な判断に耳を傾けることも重要であろう。

なお、行政や地域の協力、職場や学校の協力も躊躇せずに求めていただきたい。身内の恋愛関係の軋轢を、他人知られたくない気持ちがあっても、それは誤りである、ストーカーは犯罪者である。凶悪化し始めたら、家族だけの力では防げない場合も出てくる。より多くの理解者の力を借り、ストーカーの歪んだ恋愛観や攻撃行動を組織的に防いでいく工夫を検討してほしい。

ストーカーの相談件数、警告や禁止命令が、徐々に増えつつある近年において、私たちは、これまでの研究知見に基づき具体的な対策で、このストーカーに対峙たいじしていかねばならない。なによりも、被害に遭っている子どもたちを孤独にせず、親である我々が、しっかりと守っている姿を示すことが大切だと考えている。

ストーカー被害の相談ができる電話番号(緊急ではない場合)
警察相談専用電話「#9110」番
桐生 正幸(きりう・まさゆき)
東洋大学社会学部社会心理学科教授

山形県生まれ。東洋大学社会学部長、社会心理学科教授。日本犯罪心理学会常任理事。日本心理学会代議員。文教大学人間科学部人間科学科心理学専修。博士(学術)。山形県警察の科学捜査研究所で主任研究官として犯罪者プロファイリングに携わる。その後、関西国際大学教授、同大防犯・防災研究所長を経て、現職。著書に『悪いヤツらは何を考えているのか ゼロからわかる犯罪心理学入門』(SBビジュアル新書)など。