晩婚化は完結出産数の先行指標となる
次に、晩婚化について見ていきます。
晩婚化が進めば、出生率の調査対象の上限年齢となる49歳までの残余期間が短くなるため、出生率は低下していくことになります。同様に、完結出産数(結婚後15~19年たった時点の出産数)も、タイムラグを経て、下がることになります。それを示したのが、図表4です。図表中央で、二つのグラフは見事に交差するのが見て取れるでしょう。初婚年齢の上昇が完結出産数を下げたことに他なりません。
変わりつつあるのは「結婚できた」女性だけ
昭和期に水も漏らさぬ体制で作り上げた「お嫁さん輩出」構造は、産業・教育両面で、完膚なきまでに破壊されてきた様が見て取れたと思います。
その結果、遅ればせながら、家庭での「昭和」も徐々に退潮し始めました。それは、行動だけでなく、心の部分にまで及んできています。ようやくこれで、女性たちも生きやすくなり始めました。
ならば、少子化も止まるはず……なのに、一向にその兆しは見られません。それはなぜでしょうか?
まず一つ、考えてほしいことがあるのです。
実は、「結婚した女性」たちは、1974年も今も、大差ないくらいに出産をしているという事実を書きましたね。平成期には働きながら「無理に無理を押して」燃え尽きるように出産をしていた女性たちも、令和の昨今では、子育て支援によりだいぶ両立が楽になって来た。それは上で見た通りです。
ただし、こうした「好転する環境」というのは、すべて「結婚した女性」たちを取り巻く条件でしかありません。
未婚女性たちにとっては、まだまだ、難題が山積みです。だからこそ、未婚・晩婚は進んでいく。その様子については、引き続き次回も見ていくことにいたします。
1964年生まれ。大手メーカーを経て、リクルート人材センター(現リクルートエージェント)入社。広告制作、新規事業企画、人事制度設計などに携わった後、リクルートワークス研究所へ出向、「Works」編集長に。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。2008年に、HRコンサルティング会社、ニッチモを立ち上げ、 代表取締役に就任。リクルートエージェント社フェローとして、同社発行の人事・経営誌「HRmics」の編集長を務める。週刊「モーニング」(講談社)に連載され、ドラマ化もされた(テレビ朝日系)漫画、『エンゼルバンク』の“カリスマ転職代理人、海老沢康生”のモデル。ヒューマネージ顧問。著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』、『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(ともにプレジデント社)、『学歴の耐えられない軽さ』『課長になったらクビにはならない』(ともに朝日新聞出版)、『「若者はかわいそう」論のウソ』(扶桑社新書)などがある。