年金がこれに加わる

さらに、働いて得る報酬だけではなく、これに年金受給が加わります。

大江英樹『50歳からやってはいけないお金のこと』(PHPビジネス新書)
大江英樹『50歳からやってはいけないお金のこと』(PHPビジネス新書)

2023年度のモデル年金支給額で見ると、夫が40年間厚生年金に加入し、妻がその間専業主婦だった場合で約22万4000円です。もし70歳まで働いて年金受給開始を繰り下げすれば、70歳からの支給額は約31万円となります。共働きの場合はさらに余裕がでます。この金額が年金として死ぬまで受け取れますから、日常生活に関してはほぼ問題はないと考えていいのではないでしょうか。

実際に私は70歳まで年金は全く受け取っていませんでした。ただ、自営業なので自分で自分に給料を払っていたのですが、その金額は月額24万円、年金よりも1万~2万円程度多いぐらいの金額にしていました。定年退職してからの10年間はほぼ22万~23万円ぐらいで普通に生活できています。したがって、過剰な不安を持つ必要はないと思います。

資産形成も50歳から始めるのは決して遅くない

もちろん、ここで出ている数字はいずれも平均値に過ぎませんから、実際にはその人の生活ぶりや働き方によって変わります。一様に決めつけることはできません。それに、リタイアした後は旅行に行ったり、趣味を楽しんだりするための費用もあった方がいいでしょう。

それらを全て年金だけでまかなうのはちょっと難しいと思います。したがって、それなりに自分で資産形成をしておくことも必要なことではあります。高齢化が進む現代においては、その対応策として、就労機会の拡大だけではなく、資産形成においても比較的年齢が高い人でも活用できる制度が整備されつつあります。50歳からでも資産形成を始めるのに決して遅くない方法があるということをまず知っておいてください。

年金手帳
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです
大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト

大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。