「含み損がえらいことになった……」2022年末、米国株を保有していた辛酸なめ子さんは日々頭を悩ませていたそうだ。この機にプロの話を聞きに行った彼女が学んだ、相場が悪化しても心穏やかでいる方法とは――。

※本稿は、辛酸なめ子『大人のマナー術』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

アメリカの国旗と下がり続ける株価チャート
写真=iStock.com/ronniechua
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昨年末に見た、米国の景気後退の影

2022年末、年末に向けて株式相場は回復するというJPモルガンのマルコ・コラノビッチ氏の予想を信じたいところでしたが、コロナ禍や戦争、インフレにスタグフレーション(景気停滞と物価上昇のダブルパンチ)の懸念もあり、まだ予断を許さない状況でした。

証券会社で渡されたグラフを見ると、ナスダックもS&P500もガクッと下がっていて、1年前よりかなり低い値です。そして自分の含み損の金額もえらいことに……。

この状態からV字回復することはあるのでしょうか。米国株を推していた厚切りジェイソン氏はもしかして損切りジェイソン氏になっていないか、とか様々な思いが去来します。証券会社の人は、今は想像以上に下がっていて、混乱期だと語っていました。

堂々巡りの不安を語る男性

先日は、カフェで隣に座った男女が、投資で損している男性と、証券会社の女性、という組み合わせのようで、男性が独り言のように堂々巡りの不安を語っているのが聞こえてきました。

「毎日毎日気をもんでプラスマイナスゼロになるならやめた方がいい。でも1年2年で戻せれば平気だけど。今は下げ相場だけれど、落ち続けるってことはないと思うし……」

女性は男性をなだめるような口調で「そうですね」と相づちを打っていました。ちらっと聞こえてきて気になったのは、「証券会社では『損切り』は禁句なので言えない」ということです。

たしかに「時間を味方につけましょう」と言われますが、損切りの話はまだ出ないです。また、顧客の中でも70代80代の富裕層は、下がってもあまり慌てていないとか。自分が亡くなるまでの老後資産はすでに確保していて、余裕の部分で運用しているのでしょう。

それより若い40代50代の老後のことを見据えて投資を始めた人たちは、今の状況に焦りを感じずにはいられません。