自分で書いた文章なのにAI生成物だと誤解される

【古川】それに加えて、もう1つ起こりうるのが、人間が作ったものが誤ってAI生成物だと判定されてしまう状況です。

【酒井】文章を書いたのは自分なのに「あなたAIでしょ」といわれてしまい、人間が人間であることの証明をしなければならなくなるということですか。なんだか怖いですね……。

【古川】結局のところ、見分けるためのツールをどれだけ高精度化させても本質的な問題解決にはつながらないのではないかと個人的に思っています。

【酒井】そもそも、自分で書いたふりをしてまでAIで生成した文章をそのまま使うという姿勢が変ですもんね。自分で文章を書くためのサポートツール的に使うなら検出ツールにも引っかからないし、AIを使っていることを隠す必要もないはずです。

古川渉一、酒井麻里子『先読み! IT×ビジネス講座 ChatGPT 対話型AIが生み出す未来』(インプレス)
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【古川】そうですね。AIを使って作った文章であっても、人間が自ら書いた文章であっても、自分の頭で考え、情報源を確認して作ったものに価値があります。

【酒井】AIで生成した文章と人間が書いた文章を見分けるツールはあるとはいえ、完全な識別はできないし、いたちごっこになってしまう。だからこそ、文章生成AIを使う人自身のモラルや姿勢も問われるということになりますね。

【古川】「どんなときにリスクが生じるのか」「それを避けるためにどうしたらいいのか」をしっかり理解したうえで、使う側がリテラシーを持って上手に使うことが大切だといえるでしょう。生成系AIは、これからもさまざまな分野に広がっていく可能性が高く、「AIをアシスタントにして仕事をする」ことが当たり前になる時代も遠くありません。そのとき、私たちは「自分だからできること」により注力することで、さらによいパフォーマンスを発揮し、「自分だから作り出せる価値」を、世の中に届けることができるようになるはずです。

イラスト(古川、酒井)=朝野ペコ

古川 渉一(ふるかわ・しょういち)
デジタルレシピ取締役CTO

東京大学工学部在学中、AI研究を専攻。大学生向けイベント総合サービス「facevent」を立ち上げ30万人に利用される。パワーポイントからwebサイトを作る「Slideflow」の立ち上げを経て、ChatGPTを活用したAIライティングアシスタント「Catchy(キャッチー)」の事業責任者に。

酒井 麻里子(さかい・まりこ)
ITライター

企業のDXやデジタル活用、働き方改革などについて取材・執筆。メタバース、XRのビジネスや教育、地方再生という分野に可能性を感じ、2021年よりWEBマガジン「Zat’s VR」を運営。他の共著に『先読み!IT×ビジネス講座 画像生成AI』(インプレス)がある。