独身男性の増加は男性全体の幸福度を低下させる
これまでの検討結果から明らかなとおり、独身男性の幸福度は低く、格差も大きい傾向にあります。このため、生涯にわたって独身を貫く男性割合の増加は、男性全体の幸福度を押し下げる効果があると考えられます。
結婚する・結婚しないは個人の選択であり、その選択は尊重されるべきです。ただ、独身男性の幸福度が低い背景には、不安定な雇用形態が影響しています。これ自体は重要な課題であり、所得や雇用を改善する経済政策の実施が求められます。
中でも就職氷河期世代への支援策は重要度が高く、非正規から正規への転換を促す能力開発支援等の持続的な支援策が重要となるでしょう。
(*1)佐藤一磨(2023)「子どもの有無による幸福度の差は2000~2018年に拡大したのか」PDRC Discussion Paper Series , DP2022-006.
(*2)Goff, L., Helliwell, J.F. and Mayraz, G. (2018), INEQUALITY OF SUBJECTIVE WELL-BEING AS A COMPREHENSIVE MEASURE OF INEQUALITY. Econ Inq, 56, 2177-2194.
(*3)松田茂樹(2010)「若年未婚者の雇用と結婚意向 ―少子化対策としても若年層の経済的自立支援の拡充を―」Life Design REPORT, Summer, 2010.7, 28-35.
(*4)佐々木昇一(2012)「結婚市場における格差問題に関する実証分析──男性の非正規就業が交際行動や独身継続に与える影響」『日本労働研究雑誌』, 620, 93-106.
1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。