「旧宮家プラン」に憲法違反の指摘

その極小化による将来への不安を緩和する苦肉の策として、いわゆる旧宮家プランが提案されている。

旧宮家プランというのは、被占領下に皇籍離脱を余儀なくされた旧宮家(当時は11あったが、後継者がいないためにすでに廃絶した家が複数ある)の子孫に対象を限定して、当事者の合意を踏まえて養子縁組などによって特権的に皇族の身分を取得できる制度を新しく設けよう、という提案だ。

しかし、同プランは憲法が禁じている「門地(家柄・家格)による差別」に該当する疑いが、憲法学者で東京大学大学院教授の宍戸常寿氏などによって指摘されている。

憲法第14条第1項には次のような規定がある。

「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」

戸籍に登録されている国民は皆、原則としてこの条文が適用される。いわゆる旧宮家の子孫ももちろん、国民としての権利と義務が等しく認められている以上、その適用対象だ。したがって、それらの人々“だけ”に限定して養子縁組による皇籍取得を“特権的”に認める制度は、まさに「門地による差別」に当たり、憲法上、許されない。

念のために付け加えておくと、皇統譜に登録されている皇室の方々は、憲法が定める「世襲」制(第2条)を支える存在として同条の適用外とすることを、憲法自体が認めている。皇室の方々は第14条よりも第2条が“優先的”に適用され、旧宮家子孫は国民として第14条が“そのまま”適用される、という関係だ。

また、男性皇族の結婚相手の国民女性が皇族の身分を取得する現在の制度では、その対象について「門地」による限定がないので、もちろん憲法には抵触しない。「日本国の象徴」「日本国民統合の象徴」であり、「主権の存する日本国民の総意に基く」とされる「天皇」をめぐる制度に憲法違反の疑いが生じることは、もちろんあってはならない。

有識者会議事務局も“ダメ出し”

これについては、内閣に設けられた皇族数の確保策を検討した有識者会議の事務局自身も問題性に気づいていたようだ。メディアにはほとんど黙殺されたが、同事務局が作成した「事務局における制度的、歴史的観点等からの調査・研究」(令和3年[2021年]11月30日)というレポートは、旧宮家からの養子縁組を認めるプランについて、抑制的な表現ながら以下のような疑問点を列挙していた(一部順序を変更した)。

養子縁組を恒久的に制度化し、例えば旧11宮家の男系男子に限って養子となることができると規定した場合には、旧11宮家の男系男子が他の国民と異なる立場にあるという見方を恒久化することにつながりかねない。これは、国民の間における平等感の観点から問題が大きいのではないか(32~33ページ)
一定の期間を限って制度化したとしても、法律の明文で規定する以上は、養子となり得る者として規定される国民と他の国民の間の平等感の問題はあるのではないか(32ページ)