※本稿は、緒方憲太郎『新時代の話す力 君の声を自分らしく生きる武器にする』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
冒頭で会話の方向性を伝える
「分かりやすく話す」中でも一番簡単なのが、「伝えたい内容を明確にする」ことです。
あなたが話をするのは、聞き手に伝えたい用件があるからなのか、それとも自分の感情を共有したいからなのか。あなたがこれから展開する会話の方向性を、会話の冒頭で聞き手に伝えるのです。
例えば、こんなふうにひと言添えてみましょう。
「ちょっと、気持ちを分かってほしくて」
冒頭にこう伝えるだけで、どういう目的の会話なのかが明確になり、聞き手も心の準備ができます。
「気持ちを分かってもらいたいだけなんだけど」と言われれば、聞き手は「そうか、気持ちを聞けばいいのか」と安心して、話の続きに集中できるでしょう。
「アドバイスがほしいのだけど」と持ちかけられれば、聞き手はどんな助言をすべきか頭の中で考えながら話を聞くことができます。
想像してみてください。どんな内容なのかも分からず、ずっと話し手の言葉に集中しなければならない状況を。聞き手にとっては、緊張を緩める瞬間がありません。
これは相手にある種の苦痛を強いているようなものです。それを解消するだけでも、聞き手の負担はぐっと軽くなります。
話題は1つに絞る
分かりやすく話すための、もう1つのポイントは、1つの会話で1つの話題に絞るということです。
例えば午後、仕事中に後輩がこう話しかけてきたらどうでしょうか。
今朝、会社に行く途中で電車に乗ったら、すごい混んでいたんです。それで、朝からぐったりしながら午前中の営業会議に出て……
終わってから経費精算をしていたら、ようやくランチの時間になって。今日はお気に入りのカレーショップが休業日だったから、カレーを食べたかったのに、ソバにしたんです。いまいちやる気にならなくて……
ところで夕方の本部長会議で出す資料の相談に乗ってもらってもいいですか?
通勤や営業会議、経費精算、ランチの話は、会話の本題とは何も関係ありません。それでも聞き手は、「これは何かの伏線かもしれないから、覚えておかないと」と緊張しながら耳を傾けなくてはなりません。
聞き手の頭のメモリーは本題とは関係のない話題でいっぱいになってしまうでしょう。これも、聞き手に大きな負荷を与えています。
あなたが伝えたいことは何なのか。1つの会話で1つの話題に絞れば、聞き手はあなたの話を深く理解しながら聞いてくれるはずです。