2040年には老人の人口が倍増する
【うめ】それがそうとも限らないのよ。中国の人口は今後もどこまでも増えるようなイメージがあるかもしれないけど、国連の推計によると、2023年にはインドに抜かれるそうよ。2030年代には減少しはじめるらしいわ。
【彦】ええ、人口が減るの? たしか30年以上続いていた「一人っ子政策」(※2)が廃止されたと聞いたけどな。子どもをひとり以上産めるようになれば、人口は増える気がするけれど。
【うめ】そのとおりなんだけど、それでも大幅には伸びないと国連は予測しているわ。なぜなら、一人っ子政策が実はそれほど徹底されてこなかったのよ(※3)。
【ジョンソン】そのとおりです。それに、台湾やかつての香港を見てもあきらかですけど、子どもがどのくらい生まれるかは、国の政策よりも経済の発展度合いが大きいですから。経済が豊かになると、みんなそこまで子どもを産まなくなるのです。これまでの「一人っ子政策」とこれからの少子化で、中国は他の国以上に高齢者の増加が大きな問題になるでしょう。
【うめ】ジョンソンさんがいうように、生まれる人口に制限をかけていた中国は急速に高齢化が進むわね。国連によると中国の65歳以上の人口は足下では約1億9000万人だけど2040年には3億6000万人に倍増すると予測されているそうよ。3億人の高齢者がこの地球上に存在するかつてない世界が生まれることになるわねぇ。
【彦】それはちょっと信じられない規模だね。
【うめ】一方、働く人口は9億8000万人から約8億6000万人と1割以上落ちこむの。働く人口が増加するのを前提にして、モノを安くつくって国内外に売るという成長モデルは成り立たなくなるわね。中国は安く働ける人がたくさんいることをアピールして、日本などの外国企業を呼びこんできたからね。国民全体に占める高齢者の割合は13.7%から26.2%まで急上昇する見込みよ。
労働人口の減少で海外に目を向ける中国
【ジョンソン】そうですよね。人が減れば、働く人も確保できません。そうするとモノを安くつくれませんし、モノを買う人も減ります。中国では、すでにマンションが余っているともいわれています。
【うめ】中国では国が建設ブームをつくりあげて、そこで多くの人に仕事をつくって、消費を促してきたからね(※4)。高速道路、下水道設備など、将来、必要となる見込みよりも多いインフラが、すでにできあがっているわ。
【彦】それならば、今後どうするの? 中国は。
【うめ】だから、いま、近くの新興国やアフリカとの関係を強化しているわねぇ。国内の代わりに、海外でモノやサービスをつくって、売ろうとしているのね。これは「一帯一路」と呼ばれ、中国から陸と海の両面で、ヨーロッパまでの地域を経済圏に収めようとする壮大なプロジェクトよ。
※2 1979年から続いていた「一人っ子政策」の廃止で、2016年からすべての夫婦が子どもをふたりまで持てるようになりました。ただ、政策廃止の効果は少ないと見られています。すでに、中国政府は2013年に夫婦のどちらかが「一人っ子」であれば、ふたり目を認める緩和策を打ち出していました。中国メディアによると、対象の1100万組の夫婦のうち、第2子出産を申請したのは13%前後にとどまりました。教育費の高騰や晩婚化が背景にあるとみられています。
※3「一人っ子政策」には「抜け道」がありました。たとえば、香港で生まれた子どもには香港の永住権があたえられたので、かつては「一人っ子政策」が適用されませんでした。ですから、「ふたり目」を望む富裕層の女性が香港で出産するケースは珍しくありませんでした。また、「いちどの出産でふたり産むなら許される」と、排卵誘発剤を使って双子を産もうとする事例も少なくありませんでした。
※4 地方政府や国有企業の借金を急増させ、地価が急上昇しました。中国の全住宅の1割超が投資目的で所有されていて、電気の契約すらしていない物件も少なくありません。将来のバブル崩壊を懸念する声もあります。