「サラリーマンの小遣い」のような発想を教えるな
子どもの頃からサラリーマンの小遣いのような発想を与えるのではなく、「限りあるこのお金をいったい何に使えば自分の人生が広がるか」を考えさせたい。むろんこれには創意工夫が必要ですが、大人でさえできている人は多くないでしょう。
また、自分で使い道を決めるというのは自己決定であり、自己責任意識につながります。
他人ではなく自分で決めるからこそ、どうすれば最も満足度が高くなるか、有利になるか、不利を避けられるかを考えます。自分の判断を振り返り、次の判断の精度を上げようとします。
その思考習慣が何十年も続けば、巨大な差になるというのは想像に難くないと思います。
たとえば文章でも、誰も批判しないようなきれいごとを書いたものより、本人の独自の主義主張やリアルな体験を書く方が、生々しく迫力があり、読む人の心を揺さぶります。つまり価値あるアウトプットは自分の血肉になったものからしか出てこないということ。
それと同じく、価値あるお金の使い方は、本人のリアルな経験からしか学べないのです。
お年玉をまったくあげない経営者、高1の子に1000万円渡した親
ちなみに私の周りの経営者の中からちょっとユニークな例をご紹介します。
ある人は、お年玉はまったくあげず、必要なものを買うときに都度渡しているそうです。
彼いわく、お金は「人の役に立ったお返し」という貢献の対価としてもらうべきものであり、本人の努力や労働と無関係にお金をあげることは、合理的ではないからだそうです。
実際、お年玉という慣習があるのはほかに中国や韓国などアジア圏くらいで、欧米にはない風習です。もっとも、キリスト教文化圏では直前にクリスマスという一大イ
とはいえ、おじいちゃんやおばあちゃんなど親戚からお年玉をもらうことはあり、さすがにそれを断るような無粋なことはせず、もらったお年玉の中からおじいちゃんおばあちゃんにプレゼントを返させるそうです。
もう一つ、お年玉のケースではありませんが、親が子にお金を渡すことについて考える際に大きなヒントになる例があります。私がしばしば紹介する経営者の話です。
彼が高校生になったとき、親から突然1000万円を渡され、「これ以降は一切のお金の援助はしないから、自分なりによく考えて使いなさい」と告げられたそうです。
彼は1週間ほど考えたのち、親に証券口座を開設してほしいと言ってきた。それで株を買って運用を始め、大学の費用もその利益で賄い、海外留学までしてしまった。
その後はいったん会社に勤めるも、3年ほどで辞めて自分で会社を立ち上げ、今は経営者として頑張っています。
もちろん子どもの個性によって適切なお金の与え方は異なりますが、こういう方法もあるのかと感心したのを覚えています。
1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒業後、会計事務所、コンビニエンスストアチェーンを経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。IT・情報通信・流通業などの経営戦略立案および企業変革プロジェクトに従事。本業のかたわら不動産投資を開始、独立後に株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズ、株式会社エデュビジョンを設立し、不動産投資コンサルティング事業、ビジネスマッチング事業、教育事業などを手掛ける。現在は起業家、個人投資家、ビジネス書作家、講演家として活動している。著書に『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)、『決定版 年収1億を稼ぐ人、年収300万で終わる人』(Gakken)、『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』(日本実業出版社)、『お金の才能』『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』(かんき出版)など。