戦後の政治は女性が依存なしには生きられないようにした
特に女性が貧困になりやすいのは、女性の労働者は非正規労働が多いからだ。非正規雇用者の70%が女性で、男性労働者の賃金を100とした場合、70でしかない。これが短期労働者になると、50になる。実に男性の半分の賃金でしかないのだ。
しかも戦後の日本社会は、女性は“誰かに依存しながら生きる”というモデルを作り出した。未婚のうちは親頼み、結婚すれば夫頼み。高齢になれば夫の遺族年金か、子ども頼み。このモデルに沿って政策が実行されてきたのだ。依存先のないシングルマザーや、親が亡くなった未婚女性、離別・死別による単身女性などは対象外だったため、貧困率が高い。女性の貧困は政策によって作られてきたとも言えるのである。そこへやってきた新型コロナウイルスは、貧困や精神的な生きづらさを抱える女性たちを直撃した。
モラハラ夫から逃げ特別給付金に助けられた女性
2020年4月20日の閣議決定で新型インフルエンザ等対策特別措置法により、特別定額給付金、1人一律10万円が給付されることになった。
東北地方に住む契約社員、山本みゆき(仮名・37歳)は、小学4年生の子どもを持つシングルマザー。「あの特別定額給付金10万円、私と次男の2人分もらえて、一息つけました」と話す。
公務員の夫(37歳)とは離婚が成立していないが、2020年3月に次男を連れて家を出た。1年間かけて準備し、息子とふたりでシェルターに逃げ込んだのだ。
「夫が転勤族で地方の官舎暮らしをしているとき、私は近所付き合いのストレスから精神的に追い詰められ、心療内科でパーソナリティ障害だと診断されました。アルコールに溺れ、死にたい衝動もありました」
夫は、病気を理解することができず、家事や育児をしないのは、単なる「なまけ」と捉えた。3年ほど前から夫が財布を握り、モラハラ、そして経済的DVが始まった。故郷に転勤になったものの山本の病気はよくならず、夫に人格を否定され続けた。