※本稿は、樋田敦子『コロナと女性の貧困2020-2022 サバイブする彼女たちの声を聞いた』(大和書房)の一部を再編集したものです。
日本はもはや社会不安が広がる「降格する貧困」の状態
現代フランスを代表する社会学者、セルジュ・ポーガムは、「社会的降格」という概念で、貧者は3つのプロセスを経ていくという。
【2】依存する
【3】社会的絆が断絶する
こうしたプロセスを経て、少しずつハンディキャップが蓄積していくという。
そして貧困には3つの流れがある。
【1】統合された貧困――ここでは貧困は自然現象だ。第二次大戦直後はまさにこれにあたる。
【2】マージナルな貧困――貧困は自然な存在ではなく、一部の人のみが貧困におちいっている。高度成長期がまさにそう。
【3】降格する貧困――貧困層がどんどん拡大して社会全体が不安になっている状態。
日本は今、まさに【3】の「降格する貧困」状態にある。なかなか思うように仕事に就けない人が増えてくる。家族や近しい人に助けてもらって、なんとか生活している。一方で貧乏の状態にある人は、公的な社会保護に支援を求め、その数も増大する。
「自分も貧困層になってしまうのではないか」という不安
「降格する貧困」はポーガムによれば、1990年代から始まっていた。不安定雇用が増え労働市場が変わってきて、それに対して何ら有効な政策がとられてこなかったことに起因する。
多くの日本人は、自分もその貧困層になってしまうのではないかと思っている。特定の富裕層を除き、みんながそう思っているのだ。一億総中流なんてもはや夢だ。誰でも貧困になりうる。