「今年もよい年であることを希望します」
宮内庁当局は当初、おそらく80歳のお誕生日かぎりの特例と考えていたのではないだろうか。昭和天皇のおことばのために、職員がスタンドマイクをわざわざ運んでいた。しかし、その翌年の新年一般参賀でも天皇はおことばを述べられた。
「新年おめでとう。今年もよい年であることを希望します」
これ以降、おことばは恒例化し、マイクもスタンド式から備え付けマイクへと変更される。
以上のような経緯で、コロナ禍前の新年一般参賀の形が定着することになった。
コロナ禍で参賀がいったん行われなくなる前、令和に入って最初の新年一般参賀(令和2年[2020年])での天皇陛下のおことばは次のような内容だった。
その一方で、昨年の台風や大雨等により、いまだ御苦労の多い生活をされている多くの方々の身を案じています。
本年が、災害のない、安らかで、良い年になるよう願っております。
年の始めに当たり、我が国と世界の人々の幸せを願います。
来年の新年一般参賀では、事前申し込みが必要な宮殿東庭での参賀とは別に、午前9時30分から午後3時30分まで宮内庁庁舎前の特設記帳所で、事前申し込みなしでも記帳を行うことができる。坂下門から参入して、桔梗門、大手門、乾門のいずれかから退出するというコースが用意されている。
私も国民の一人として記帳の列に加わるつもりだ。
1957年、岡山県生まれ。国学院大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得。皇位継承儀礼の研究から出発し、日本史全体に関心を持ち現代の問題にも発言。『皇室典範に関する有識者会議』のヒアリングに応じる。拓殖大学客員教授などを歴任。現在、日本文化総合研究所代表。神道宗教学会理事。国学院大学講師。著書に『「女性天皇」の成立』『天皇「生前退位」の真実』『日本の10大天皇』『歴代天皇辞典』など。ホームページ「明快! 高森型録」