株価が下がって損が出ているのに持ち続ける。どうすればうまく損切りの判断ができるようになるのか。経済コラムニストの大江英樹さんは「損をして売った後に株価が上がって大後悔するという事態を避けたいがために、人はどうしてもずるずると株を持ち続けてしまうのです。まずはそうした心理的な傾向があることを知ることが大切です」という――。
アプリで、価格が下落している株を売却しようとしている手元
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長年、投資をしているのに儲からない人

投資でよく起こりがちなことに買った株が下がってもなかなか損切りすることができず、そのままズルズルと持ち続けることで損失が拡大してしまうということがあります。これは投資家の間では俗に“塩漬け”という状態で、結局長期にわたって損失を抱えたまま持ち続けることになります。

この“塩漬け”というのは基本、何も良いことがありません。なぜなら、投資した資金を先の見えないまま長期に寝かし続けることになるため、資金効率も良くありませんし、他の有望な銘柄に対する投資機会も奪ってしまうことになりかねません。損切りができずに大損したという人はあまりいませんが、長年にわたって投資をしてもちっとも儲からないという人の多くは損切りができないことに起因していると言ってもいいでしょう。

ただし、私はどんな場合でも下がったら損切りすべきだとは思いません。むしろ下がった時に深く考えずに気分が悪いからといって投げ売りをしてしまうのは最悪の行動で、大損した人はむしろこちらのパターンの人の方が多いと思います。最近でもコロナ禍、あるいは少し前ならリーマンショックの時に恐くなって売ってしまった人が結果的には大損をしているのです。

早く売ってしまったほうがいいケース

では、損を覚悟でも早く売ってしまった方が良いというのは一体どういうケースなのでしょう。それは投資している企業自体の内容が悪化し、業績も財務内容も大幅に悪くなる場合です。こういう時は低迷が長く続くと考えられるため、早く見切りを付けた方がいいのです。

そして実は株式というものは、買う時よりも売る時の方が圧倒的に難しいのです。なぜなら買う前はその株を持っているわけではありません。仮に買おうと思っているうちに上がってしまっても多少の後悔はするでしょうが、実損はありません。ところが売る時というのは既にその株を持っている状態です。売った後に上がってしまったらどうしよう? とか、逆に売らずにいて下がってしまったらどうしよう? という不安は買う前と比べて比較にならないくらい大きいのです。したがって、株式投資において、本来ならば売るべき時に売れなくなり、前述した“塩漬け”の状態に陥ってしまうことはしばしば起こります。