人を見かけで判断してはいけない、とよく言います。けれど見かけをコントロールすることは、ビジネスパーソンにとって無視できないほどの効果を生み出すそう。人それぞれ異なる感覚に頼らず、戦略的に外見を役職にフィットさせる方法を「外見リスクマネジメント」の提唱者・石川慶子さんに伺います。
ビジネス女性の身嗜み
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自分の姿、想像と現実はマッチしていますか?

例えばオンライン会議中の自分の顔を見て「想像と違う!」と思ったことはありませんか? 「こう見えたい」と思っているのに、相手からはそう見えない状態にあることを“外見リスク”と捉え、そのギャップを埋めることを「外見リスクマネジメント」と定義しています。心理学における「メラビアンの法則」によると、見た目と話す内容が一致していない場合、人は見た目を重視してしまいます。外見には情報量が想像以上に多く詰まっているのです。

見え方へのこだわりは、もはやビジネスツールのひとつ!

ではビジネスシーンにおいて外見リスクマネジメントにはどのような役割とメリットがあるのでしょうか。

1970年代のアメリカで「ネクタイを着用した市場調査員は中流階級でもっとも応諾率が高かった」という実験結果が示されました。このことから「人は自分に似た服装の人に好感を持つ」といわれています。また「身なりを整えて清潔感のある魅力的な外見は人からの援助(ここではちょっとした人助けの意味)を多く受ける」という実験結果もあります。つまり外見リスクマネジメントには好感を得る役割があり、話に耳を傾けてもらいやすくなることがうかがえます。そしてそれはビジネスチャンスの拡大につながります。

さらに社会学者・ゴフマンは「言語と外見が不一致だと一貫した印象形成がなされにくい」という説を提唱しました。例えば、口では謝っているのに目が笑っていたら信用できませんよね。つまり見た目次第で人は誤解や非難などのリスクを負う可能性があるのです。逆に外見マネジメントで日頃から信頼を担保しておくと、何かあったときにリカバーしやすくなるのも人間の性。例えばいつも感じのいいタレントが泥酔して人に迷惑をかけたというニュースを見たら、一瞬不快に思っても、何か嫌なことでもあったのかな、などと寛大に考えたりしませんか?

またゴフマンの説は、外見を話す内容に一致させれば一貫した印象形成ができる、という可能性も示しています。すると相手に安心感を与えられるので「この人と一緒に仕事がしたい」と思わせることができ、ビジネスチャンスがここでもまた広がるのではないでしょうか。

さらに許す内容と外見が一致していると、伝えたいことがスムーズに伝わるのでコミュニケーションの速度が確実にアップ。仕事の効率化まで狙えます。

外見リスクマネジメントの役割