協力してできること:気づきを伝え合い、子どもをサポートする

親と先生がどちらも子どもに無理をさせないようにして、学習環境を見直していけば、状況は改善していくでしょう。何か気づきがあれば、お互いに伝え合うようにするのもよいと思います。例えば学校で先生が「この子はこういうやり方が得意なんだ」と感じたとき、それを親に伝えれば、親も子どもに対する理解が深まります。親と先生で連絡を取り合い、授業や宿題を調整していけたら、子どもの学びやすさは大きく向上するはずです。そのような協力を心がけてもらえればと思います。

親としては、「勉強がうまく進まないくらいで学校に相談するのは、やりすぎかもしれない」と感じるかもしれません。しかし、子どもの学習環境を整えるためには、学校との情報交換が必要な場合もあります。「宿題に苦労している」といった話しやすい話題から始めて、様子を見ながら学校との相談を検討してみてください。

学校の先生には、親からの相談をクレームだととらえずに、話を聞くようにしてほしいと思います。家庭との情報交換によって、子どもの得意なやり方やその子をサポートするコツがわかり、授業を組み立てやすくなる場合もあります。

握手した手の上を渡る小学生のイラスト
写真=iStock.com/Feodora Chiosea
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協力してできること:状況が良くならない場合は特別支援教育の検討を

ただ、家庭と学校で相談し、いろいろと調整をしても、状況がなかなか良くならないこともあると思います。例えば子どもに学習障害や知的障害があり、親や先生にはその詳細がわからず、よい対応法がなかなか見出せないという場合もあります。

環境を整えてみても子どもが苦労しているという場合は、私たちのような専門家に相談するのもよいと思います。中にはそのような相談をきっかけにして発達障害に気づき、特別支援教育の利用を検討する人もいます。

本田 秀夫(ほんだ・ひでお)
信州大学医学部 子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長

特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事。精神科医師。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学医学部附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年より、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。2018年より現職。日本自閉症協会理事、日本自閉症スペクトラム学会常任理事、日本児童青年精神医学会理事。著書に『自閉症スペクトラム』『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』(ともにSB新書)などがある。