女性の立場向上を実現できなかった悔しさ
いよいよ、最後の質問だ。今回、あえて取材に応じてくれた真意はどこにあるのだろう。
「私自身は最も高い職位に試験で合格し、部長職になりましたが、能力のある女性社員が次々と潰されていくさまを止めるほどの力はなく、定年を迎えるまでの37年間、結局女性の立場向上は実現できませんでした。敗北のむなしさを抱えたまま、再雇用に甘んじています。
女性のキャリア形成に、女性特有のライフスタイルの変遷や身体の変化を折り込んだ施策が必要だと、私の経験から強く思います。例えばジェラシー・コントロールについて適切に対処できるよう、プログラムの下に指導していくなど対策が全く欠けている。これは決して、個人の努力の問題に期してはいけない。会社として、あるいは国として、正面から取り組まなければいけない問題だと思います。そこに着手しないと、男性同士で出来上がった出来レースという世界に、女性は全く太刀打ちできない。いくらその女性が優秀でも、優秀なアイデアを実現するすべがないのです」
窪田さん自身の苦節から迸る、後輩女性たちへの思い。女性がのびのびと能力を発揮できる、新たな道を作らないといけない。均等法第一世代を生きた、窪田さんの身を削るような叫びだ。
福島県生まれ。ノンフィクション作家。東京女子大卒。2013年、『誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち』(集英社)で、第11 回開高健ノンフィクション賞を受賞。このほか『8050問題 中高年ひきこもり、7つの家族の再生物語』(集英社)、『県立!再チャレンジ高校』(講談社現代新書)、『シングルマザー、その後』(集英社新書)などがある。