高い視座からの政策決定を

もう一つ気になっているのは、対象者をワクチンの3回接種証明もしくはPCR検査・抗原検査の陰性証明がある人に限定している点です。

ワクチン接種は任意のはずです。税金を投入するというのにこれで差をつける(税金を納めていても、希望者がワクチンを接種していないだけで公平にサービスが受けられない)のは理不尽ではないでしょうか。

ホテルも旅館も、これでもかというほど感染対策を入念に行っています。入館時に体温も計測しますし手指の消毒もします。個人的にはやりすぎではないかと思えるぐらい徹底していますから、業界への支援というなら制限なしでやればいいのに、と思います。

温度測定と手指消毒剤付きのホテルの受付
写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn
※写真はイメージです

ほかにも産み控えを解消するために、0~2歳児がいる家庭に子育てクーポンの支給を検討しているそうで、どういう思考回路を持てばこの程度の方法で産み控えが防げるという発想になるのか、理解不能な策を次々と打ち出しているぐらいですから、やむを得ないのかもしれません。

おそらく日本の政治家は抽象化思考が苦手で、時間軸を長く取って高い視座からの政策決定ができないのでしょう。

具体の世界でしか生きていないゆえに「目先だけ」「行き当たりばったり」「わかりやすい対象」「票田になる業界」にしか視点が向かないのだと思います(とりあえずの支持率狙いにしても貧弱過ぎますし)。

「人の話を聞く政権」を標榜していますが、「聞くけどスルー」にならないことを祈ります。「決断と実行の政権」を標榜していますが、「何もしないという決断」「動かないという実行」にならないことを祈ります。

午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士

1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒業後、会計事務所、コンビニエンスストアチェーンを経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。IT・情報通信・流通業などの経営戦略立案および企業変革プロジェクトに従事。本業のかたわら不動産投資を開始、独立後に株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズ、株式会社エデュビジョンを設立し、不動産投資コンサルティング事業、ビジネスマッチング事業、教育事業などを手掛ける。現在は起業家、個人投資家、ビジネス書作家、講演家として活動している。著書に『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)、『決定版 年収1億を稼ぐ人、年収300万で終わる人』(Gakken)、『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』(日本実業出版社)、『お金の才能』『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』(かんき出版)など。