野菜スープでシミが薄くなった

診察のために離島からやって来た夫婦がいた。語るのは夫人(当時65歳)だ。

「2020年の6月です。主人が掌蹠膿疱症しょうせきのうほうしょうという病気(手のひらや足の裏に水疱や膿疱ができる)で診てもらったとき、堂園先生から野菜スープをすすめられました。でも作るのは私です。だったらと、それ以来二人で毎日飲んでいます。半年ほど経った頃でしょうか、以前はよく口内炎ができて、いったんできると治るまで2週間以上もかかったのに、野菜スープを飲み始めたからか、1週間もせずに治ってしまいました。そのうち口内炎もできなくなったんですよ!

体調もずいぶんよくなりました。なによりも驚いたのは、手の甲に大きなシミが三つあったのに、今は一つが消えて、残りの二つも薄くなっていることです。使う野菜はかぼちゃ、にんじん、たまねぎ、キャベツが中心で、私の場合は汁と具を分けています。夜1回、スープだけ200ミリリットルを飲みます。主人は朝昼晩の3回です。具の野菜は味噌汁に入れたりサラダにしたりして食べています。飲んでいると体の中がお掃除されていく感じがしますね」

農薬のリスクが少ない有機野菜を使う

うつ、不安障害、慢性腸炎と診断された25歳(当時)の女性の証言。

奥野修司『野菜は「生」で食べてはいけない』(講談社)
奥野修司『野菜は「生」で食べてはいけない』(講談社)

「野菜スープを飲み始めてまだ2週間です。以前からお腹の調子がよくなかったのですが、飲み始めて1週間ほどで便の調子がよくなってきました。体調もいい感じに改善されています。スープは夜1回だけですが、ぜひこのまま続けたいと思っています」

うつ病の人は、同時に便秘や下痢などのトラブルを抱えていることが多く、腸内細菌叢を調べると、善玉菌が減って悪玉菌が増える傾向にあるという。

また脳と腸は迷走神経を介して双方向で情報を交換していること(脳腸相関)がわかってきているから、腸内環境がよくなれば、あるいはうつ病などの改善も期待できるかもしれない。逆に、農薬のなかにはうつ様症状を示すものもあることが動物実験でわかっているから、そういうリスクを考えればやはり有機野菜を使いたい。

奥野 修司(おくの・しゅうじ)
ノンフィクション作家

1948年大阪府生まれ。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』(文春文庫)で講談社ノンフィクション賞と大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。著書に『ねじれた絆』(新潮社、後に文春文庫)、『心にナイフをしのばせて』(文春文庫)、『魂でもいいから、そばにいて 3.11後の霊体験を聞く』(新潮社)、『天皇の憂鬱』(新潮新書)、共著に『怖い中国食品、不気味なアメリカ食品』(講談社文庫)、などがある。