職場で体験する数々の理不尽な出来事にも平常心で対応できる人は何が違うのか。ドラッカー・スクール・オブ・マネジメント准教授、ジェレミー・ハンターさんは「負の感情と向き合うためには、自分の感情にじっくりと寄り添いながら、消化してみてください。トレーニングによって、感情を吐き出すでもなく、ため込むでもなく、流せるようになります」という──。
会議でプレゼンをするビジネスマン
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責任者として会議に参加しているのに通訳だと間違われる

わたしはこれまで日本でセルフマネジメントを教えてきて、フラストレーションの中で生きる女性リーダーの悩みをたくさん聞いてきました。

たとえば、ある投資会社の管理職を務める女性の話では、取引先との重要なミーティングで幾度となく同時通訳者と間違われたそうです。責任者としてその場にいるのにもかかわらず、女性だからという理由だけでスルーされてしまう理不尽さ──。こんなことが日々繰り返され、怒りが蓄積していったといいます。

このような社会の理不尽さは、容易に変えられるものではありません。人間関係の理不尽さに対抗して、その会社を辞めるという選択肢はあります。あるいは、長期休暇を申請して体と心を休ませたり、事情を知っている人に相談したり、協力してもらうのも手です。

けれども、根本的に理不尽さを変えられないのであれば、またいつどこで同じような目に遭うかわかりません。では、理不尽さにさらされるたびに湧き上がってくる怒りをうまく対処できる方法はないものでしょうか?

感情コントロールとは

怒り・イライラ・失望・諦めなどの負の感情とうまく付き合う方法はあります。それには時間と練習が必要です。

自発的に湧き上がってくる感情をどうコントロールするのかについては前回の記事(「職場の一番苦手な人から電話着信…『気の重い仕事』が苦ではなくなるドラッカー・スクールのすごいメソッド」)でも少しお話ししましたが、感情そのものを意図的に止めることはできません。ただし、スキルを磨いて巧みに扱うことはできます。

一般的に、負の感情に対して最もよく取られる行動は、自分の中に押しとどめるか、あるいは爆発させることです。または、会社ではガマンして、家に帰ってから家族にぶちまけてしまうというパターンもありますね。

わたしの経験から言うと、日本人の多くは前者──すなわち、感情を自分の中に押しとどめる傾向にあります。

しかし、負の感情を自分の中に押しとどめているのは、とてもつらいことです。そのつらさから逃れるために毎晩お酒を飲まずにはいられない、と話してくれた女性弁護士がいたぐらいです。また別の女性は、ワイングラスを掲げながら「これが私のマインドフルネスです」と冗談めかして言ったことさえありました。