暦年課税が向く人、相続時精算課税が向く人

暦年課税が向いているのは、長期間かけて財産を譲渡したい人です。また、贈与の対象者が多い場合にも向いています。たとえば5人の子どもがいるなら、110万円ずつ贈与すれば、1年間で550万円の財産を贈与できます。

ただし、毎年一定額の贈与を受け続けると、基礎控除額を上回る金額を分割でもらっていたとみなされ(連年贈与)贈与税が課税される恐れがあるため、3年に1回や4年に1回、110万円の範囲でまとめてもらうのがいいでしょう。その場合、贈与契約を取り交わし、証拠として銀行送金で贈与するという方法で行いましょう。

頼藤太希『会社も役所も銀行もまともに教えてくれない 定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)
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対する相続時精算課税が向いているのは、一度にまとめて財産を贈与したい人です。また、将来値上がりする可能性のある財産の贈与を受ける場合にも有効です。

将来、相続税は、贈与を受けたときの価格で計算されます。仮に1000万円で贈与を受けた財産が2000万円に値上がりしていても、相続税の計算上は1000万円の財産とされるので、その分税額が少なくて済むというわけです。

なお、教育資金、結婚・出産・育児資金、住宅取得資金にも一括贈与による非課税の特例があります。自分の子ども(親から見れば、孫)に贈与させることで相続時の財産を減らせますので、要件を満たすのであれば検討しましょう。

認知症になる前に子に財産管理を任せる「家族信託」という手も

また、「家族信託」を利用すると、親が認知症を発症したり、重度の病気で倒れたりして、自分で自分の財産を管理できなくなったときに、自分の財産の管理や処分を子どもに任せることができます。たとえば、子どもが親の介護に必要なお金を親の口座から引き出して使ったり、親の保有する株式を売却したりできる、というわけです。

家族信託では、財産を相続する人を選べます。家族信託の契約のなかで財産を継がせる人を決めることで、遺言と同様の効果が得られます。しかも、財産を相続する子の代(次の相続)だけでなく、孫の代(次の次の相続)まで指定することができるため、より思いどおりの相続ができます。

そのうえ、家族信託で財産をどうするかあらかじめ決めておけば、相続時の遺産分割協議をする必要がなくなります。家族間の揉めごとを減らすのにも役立ちます。

ただし、家族信託の手続きは非常に複雑です。個人で手続きをしようとすると大変ですし、トラブルのもとですので、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

頼藤 太希(よりふじ・たいき)
Money&You代表取締役

中央大学客員講師。 慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』や『Mocha(モカ)』を運営。資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。著書は『1日5分で、お金持ち』(クロスメディア・パブリッシング)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂)など多数。日本証券アナリスト協会検定会員。ファイナンシャルプランナー(AFP)。YouTubeチャンネル「Money&You TV」配信中。