コロナは女性が多い産業を直撃した

ジェンダーギャップ報告書はグローバルな比較であって、各国の状況を細かく分析しているわけではありません。「順位が上がった」「下がった」というだけでは一面的な議論になるところもあります。

日本の状況については、ぜひ、今年6月に内閣府の男女共同参画局が発表した「男女共同参画白書」のレポート『人生100年時代における結婚と家族~家族の姿の変化と課題にどう向き合うか~』も合わせて読んでほしい。男女の年収や雇用格差が、結婚や家庭における役割の非対称性とともに丁寧に分析されていて、コロナ禍がとくに女性に大きな打撃を与え、女性の自殺者数が急増したことがよくわかります。

コロナの影響が大きかった介護や保育などのケア産業、飲食や接客、小売りなどの業界は女性が多く、非正規の割合も高い。労働時間の短縮を余儀なくされたり、職を失ったりした人がたくさん生まれました。また、こうした業界・業種は、リモートワークなどの柔軟な働き方をすることが難しく、通常にもまして家事や子育てとの両立が難しくなった女性が、退職するケースも目立ちました。

一方、リモートワークなどの柔軟な働き方が比較的しやすいIT関連や理系の仕事は、男性の比率が高い。このあたりの状況も、男女共同参画白書ではデータを示しながらわかりやすく説明しています。

これまで日本の社会が抱えていた問題を、コロナ禍がさらに「見える化」してしまったことがよくわかります。国際比較も気にしつつ、さらに一歩踏み込み、少子高齢化や家族のあり方の変化も踏まえて日本でどのようにジェンダーギャップを解消していくべきかを議論することが重要でしょう。

制度全体が「イエ依存」で作られている

男女共同参画白書は、本当に良いレポートで、従来の、婚姻や「イエ」を前提にしたさまざまな制度のあり方が揺らいでいることがよくわかります。人びとの結婚観が大きく変化し、結婚を軸にした、「世帯年収」単位でつくられた仕組みに限界が来ていて、社会保障などのさまざまな政策や企業の制度がまったく追いついていません。

例えば、男女の年収格差は、未婚よりも既婚の方が大きな開きがあります。25歳から29歳女性の年収は、未婚では200万円以下が3割前後なのに、同じ年代の既婚の女性だと5~6割を占めるようになります。これにはさまざまな要因がありますが、「女性が“イエ”に依存せざるを得ない仕組みができてしまっている」ことが大きい。

「夫の収入で妻や子どもを養う」ことを前提に高度成長期に作られた税や社会保障の制度、企業の配偶者手当などの制度が続いているため、働く既婚女性には、年収を103万円や130万円、150万円以下に抑えようというインセンティブが働いているのです。

離婚が少なかった時代は、世帯年収がある程度確保できていればそれでよかった。でも、今のように離婚が増えると、離婚したとたんに女性が困窮する可能性が高くなります。また、たとえDVの被害を受けていたりしても、経済的な理由で離婚ができない女性も多い。

制度の方が、女性を男性の収入に依存させる仕組みを作っているんです。男女共同参画白書では、こうした制度の改革が必要であることもはっきり指摘しています。