食費の中身を知らない人は貯まらない

せっかく稼いでいるのに貯まらない人が最初にすべきことは、自分の食費を知ることだ。金額がはっきり言えない人は、まずいくら使っているかを振り返る。貯まらない人は、そもそもいくら使っているかに気づいていないことが多いからだ。

次に、その中身を振り返ってみる。食費を①必需品としての食品、②レジャーとしての食品、③アルコールやデザートなどの嗜好品、④外食の4つに分けてみて、ざっくりでいいのでその割合を知ろう。それによって、食費に入れるべきでないレジャー食費や嗜好品の金額がどのくらいを占めているかわかるはずだ。

もし、本気で貯めたいと思うなら、こうして把握できた食費をベースにして適正な予算を決めることが出発点だ。嗜好品や楽しみのために使いたいレジャー食費をいきなりゼロにするのではなく、それぞれに予算を決める。いくらでも使っていいのではなく、いくらまでなら使えるという意識に切り替えるわけだ。これらの予算を決めたら、あとはそれを守るだけだ。そのために簡単なのは、数字を意識づけること。月の食費予算をひと月で割り算して、1日いくらなら使っていいかを知ることだ。すると、「安くなっているから」「まとめて買うと割引になるから」と気軽にポンポン買えないとわかるだろう。適正な量を買い、それを使い切ることを繰り返せば、どんどん冷蔵庫はすっきりしてくるはずだ。

値上げによる影響は「食費1割増」

また、キャッシュレス決済の使い方も一工夫を。できれば食費用の決済ツールを一つに決め、オートチャージ設定はしない。食費予算の金額をチャージし、その範囲で使う。予算はひと月分でも一週間分でもいいが、やりくりに自信がないなら週予算のほうがいいだろう。使った金額よりも残高を意識することで、自然に歯止めになるものだ。

家計簿アプリを使うのもいいだろう。レシートを読み込ませると、それが在庫メモ代わりになるので、二重買いを防ぐことができる。また。クーポンが届いても、それが今必要な食品かも判断できるだろう。

ただし、節約しようとして現実に合わない予算を立てるのは厳禁だ。ただでさえ、食品の値上げが相次いでおり、その値上げ率は平均13%にもなるという。これまでかかっていた食費に対し1割程度は増えると思っておいた方がいい。しかし、これまで無制限にレジャー食費や嗜好品にかけていた分を削れば、それほど大変ではないはずだ。食費に紛れていたぜい肉を落としてスリム化すれば、貯まる家計に変わるのも夢ではない。

松崎 のり子(まつざき・のりこ)
消費経済ジャーナリスト

『レタスクラブ』『ESSE』など生活情報誌の編集者として20年以上、節約・マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析してきた経験から、「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。著書に『定年後でもちゃっかり増えるお金術』『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない 』(以上、講談社)ほか。