明らかになった、父と娘の行き違い
平成29年(2017年)5月16日のNHKのご婚約内定をめぐるスクープについて、秋篠宮殿下ご自身のリークという報道があった。これについて江森氏が秋篠宮殿下にお尋ねしたのに対し、キッパリと否定された上で「できれば、早く訂正したいですよ」(31ページ)とおっしゃった。
だが、宮内庁を通して訂正を申し入れられた様子はなく、スクープ通りご婚約内定の記者会見が行われた(同年9月3日)。こうした経緯は、いささか釈然としないものを感じさせる。
平成30年(2018年)4月より前の時点で、秋篠宮殿下は週刊誌が報じた小室氏のご母堂をめぐる“金銭トラブル”なるもの(ご母堂の元婚約者という人物は後に「貸したお金ではなかった」と認めたようだ)について、小室家の責任で解決するように求めておられたという。
「2人の結婚は、国民に祝福してもらえる結婚でなくてはいけません。そのためには、小室家側がきちんと説明し、国民に納得してもらう必要があります。今のままだと(一般の結納に当たる)納采の儀は行えません」という考え方だ(49ページ)。しかしその時点で、果たして小室母子だけで“火消し”できる状態だったかどうか。
結局、その難しい“宿題”に解決の糸口が見えないまま、小室氏から海外への留学の意向が伝えられる。これに対し、秋篠宮殿下は「どうするのだろうと思って……」(51ページ)と途方に暮れられたようだ。
しかし、その海外留学は眞子さまが小室氏に強く求められたことだった。それは、令和3年(2021年)10月26日のお2人の婚姻届けが提出された後の記者会見で、明らかになった。
同じ宮邸に住んでおられた父と娘の間に、どうしてこのような行き違いが生じたのだろうか。今回の顚末が結果的に、秋篠宮家だけでなく、天皇陛下にもご迷惑を及ぼし、皇室そのものに寄せる国民の信頼と敬愛の気持ち損ないかねない事態を招いてしまっただけに、残念でならない。
江森氏の“奇妙な私見”
本書では、天皇や皇族方の人権や自由について、問題提起を試みている(第5章)。これはもちろん大切なテーマだ。しかし、憲法をめぐる基礎的な学説整理をしないまま、特定の憲法学者(故・奥平康弘氏)の意見だけを振り回しているように見えるのは、残念だ。これについて、機会があれば私なりの整理の仕方を披露したい。
それよりも、憲法について秋篠宮殿下のお考えを紹介しつつ、奇妙な私見を開陳されているのが、気になる。